【6 Step】異核二原子分子の分子軌道!エネルギー準位図の書き方を徹底解説!

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大学化学で分子軌道(MO理論)を学ぶと、最初はH₂O₂など等核二原子分子から勉強します。

しかし、

『HFやCOはどうやって書けばいいの?』

『左右の原子が違う場合は何が変わるの?』

と疑問に思ったことはありませんか?

実は、異核二原子分子のエネルギー準位図も、

『6 Step』

で考えれば簡単に書くことができます。

この記事では、HFを例にしながら、異核二原子分子の分子軌道の書き方を基礎から解説していきます!

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目次

異核二原子分子とは?

異核二原子分子』とは、異なる2種類の原子からなる二原子分子のことです。

例えば、

  • HF(フッ化水素)
  • HCl(塩化水素)
  • CO(一酸化炭素)
  • NO(一酸化窒素)

等が異核二原子分子になります。

これに対して、H2O2のように同じ種類の原子から構成される二原子分子は等核二原子分子と言われています。

等核二原子分子の分子軌道エネルギー図の書き方については、こちらの記事で解説しました。

分子軌道の基礎的な書き方を解説しているので、まずはこちらをお読みください!

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等核二原子分子との違いは?

結論から言うと、異核二原子分子の分子軌道を書くのは、等核二原子分子の場合よりも難しいです!

その理由は、

『軌道がどのように相互作用するか考えなくてはならないから』

です。

下図について、左はH2(等核二原子分子)の分子軌道で、右はHCl(異核二原子分子)の分子軌道(HClは一部抜粋)です。

水素の場合、それぞれの1s軌道は同じエネルギー準位にあるので、それらが相互作用します。

一方、異核二原子分子では2つの原子が異なるので一方の1s軌道と他方の1s軌道は同じエネルギー準位ではありません。

例えば、HClならばHの1s軌道とClの1s軌道のエネルギー準位に大きく差があり、相互作用は非常に小さく、これらの相互作用は無視できます。

つまり、どの軌道同士が相互作用するのか考える必要があるということです。

ここが、異核二原子分子の分子軌道を書く上で難しいポイントとなります!

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HFのエネルギー準位図を書いてみよう!

それではHFを例にエネルギー準位図を書いていきます。

こちらの記事では、エネルギー準位図を6 Stepで書いていきました。

異核二原子分子では、等核二原子分子よりも考えることがありますが、同様に6 Stepで書いていきましょう!

① 縦軸をエネルギーにする

まず左側に上向きの矢印を書き、上ほど高エネルギー下ほど低エネルギーとします。

等核二原子分子と全く変わりません。

② 左右に原子軌道を書く

左にH、右にFの原子軌道を書いていきます(左右が逆でも構いません)。

まず、それぞれの電子配置を考えると、

H:1s¹

F:1s²2s²2p⁵

となります。

ただし、通常は価電子だけ考えれば十分なので、Fについては、2s2pのみを書けばよいです。

そして、異核二原子分子気をつけなくてはいけないのが、原子軌道の位置です。

結論としては、以下の図のようになります。

ポイントは各元素の電気陰性度です。

電気陰性度が高い元素は、電子を引き付ける力が強いため、全体的に低エネルギーになります。

今回の場合、Fの電気陰性度がより高いため、Fの方が低エネルギーなので、上図のようになります。

③できる分子軌道を考える

軌道同士が十分に重なるためには、

  • 対称性
  • エネルギー

が近い必要があります。

Hの1s軌道とFのどの軌道が相互作用するか考えてみましょう。

結論から言うと、Fの2pz軌道のみが相互作用します。その理由は以下の通りです。

  • Fの2s軌道…エネルギーがHの1sとのエネルギー差が大きいため、Hの1sとの相互作用は無視
  • Fの2px, 2py軌道…結合軸に垂直なので、Hの1sとは重ならない
  • Fの2pz軌道…結合軸方向に軌道が向いており、Hの1sと重なる

重なる場合…結合性軌道と反結合性軌道になる
重ならない場合…非結合性軌道になる

よって、2s, 2px, 2py軌道は非結合性軌道となり、Hの1s軌道とFの2pz軌道は重なることで結合性軌道と反結合性軌道となります。

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④ 分子軌道を書く

③で考えた結果を基に、分子軌道を書きましょう!

先に書いた通り、Hの1sとFの2pzから結合性軌道と反結合性軌道が出来ます。

一方、Fの2s, 2px, 2pyは非結合性軌道なので、ほぼそのまま残ります。

これを基に書くと下図の通りです。

形成された分子軌道は下から、1σ、2σ…、1πと名称をつけていけばよいです。


⑤ 電子を書き入れる

HFの価電子数は、H:1個、F:7個なので、合計8電子です。

これらの電子を

  • 構成原理
  • フントの規則
  • パウリの排他原理

に従って下から順番に入れていくと、下図のようになります。

上記の通り、結合性軌道及び非結合性軌道が電子で占有され、反結合性軌道は空になります。

これでHFのエネルギー準位図が完成です!

⑥ 結合次数を求める

結合次数は下記の式から求めることが出来ます。

$\frac{結合性軌道の電子数ー反結合性軌道の電子数}{2}$

上式からもわかる通り、非結合性軌道を考える必要はありません。

⑤の通り、結合性電子:2及び反結合性電子:0より、

$\frac{2-0}{2}=1$

となります。

この結果から、HFが単結合であることもわかりますね。

異核二原子分子において、分子軌道はエネルギーが近い方の原子軌道の性質をより強く持つ傾向があります。

つまり、HFにおいてHの1s軌道Fの2pz軌道からできる結合性・反結合性軌道について、

結合性軌道…低エネルギー側にあるFの2pz軌道の性質をより強く持つ
反結合性軌道…高エネルギー側にあるHの1s軌道の性質をより強く持つ

となります。

要するに、電気陰性度の大きい原子ほど原子軌道が低エネルギーになり、結合性軌道もその原子の性質を強く持つと覚えておきましょう!

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COのエネルギー準位図を書いてみよう!

COのエネルギー準位図も同様に考えましょう!

CとOの価電子配置は、

  • C:2s² 2p²
  • O:2s² 2p⁴

です。また、これらはどちらも第2周期元素なので、エネルギー差はそれほどありません。

よって、基本的に等核二原子分子のように2s同士、2p同士のように相互作用します。

しかし、Oの方が電気陰性度が大きいため、Oの2s・2p軌道の方がCよりも低エネルギーになります。

結果として、

2s と2pz軌道同士で結合性・反結合性σ軌道

2px, 2py軌道同士で結合性・反結合性軌道π軌道

が分子軌道として生成されます(ただし、2sと2pzからできるσ軌道同士も相互作用すると言われます)。

以上をまとめると、下図のようになります。

(実際は、CとOのエネルギーが近いため2sと2pz軌道同士でも相互作用すると考えられます)

COの価電子数は、C:4個、O:6個なので、合計10電子です。

したがって、10個の電子を分子軌道に入れています。

最後に、結合次数を求めましょう!

  • 結合性電子:2 + 4 + 2 = 8個
  • 反結合性電子:2個

なので結合次数は、$\frac{8-2}{2}=3$です。

つまり、COは三重結合を持つ分子となります。

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Tips:異核二原子分子ではg・uを使わない

等核二原子分子では、

  • g
  • u
  • u

など、g(gerade)u(ungerade)を用いました。

しかし、異核二原子分子には反転中心が存在しないので、g・uの区別はできません。

よって、gやuをつけずに1σ、2σ、1π…と描きます。

これは院試でも頻出なので、ぜひ覚えておきましょう!

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最後に

いかがでしたか?

今回は「異核二原子分子の分子軌道の書き方」について解説してきました。

異核二原子分子も基本的な流れは等核二原子分子と同じで、

①縦軸をエネルギーにする

②真ん中にスペースを空けて置き、原子のエネルギー準位図を左右に書く

③できる分子軌道を考える

④分子軌道をエネルギー準位図に書き入れる

⑤電子を書き入れる

⑥結合次数を求めて、分子の安定性を判断する

6 Stepで考えることができます。

また、異核二原子分子の分子軌道を書くポイントは、

  • 左右の原子軌道のエネルギーが異なる
  • 対称性が一致し、エネルギーが近い原子軌道同士が相互作用する
  • 反転中心がないため、g・uの表記を使わない

となります。

これらを理解すると、HFだけでなく、COやNO、HClなどさまざまな異核二原子分子の分子軌道も考えられるはずです!

ぜひ、参考にしてみてくださいね!

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この記事を書いた人

国立大学の化学科を首席で卒業!
現在はメーカー勤務の社会人です。
自身の経験を基に、勉強法や院試過去問解説などをしています!
詳しくはこちらのXから
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