東京科学大学大学院(物質理工学院応用化学系)の過去問を解いているけれど、
院試の解答が存在しない
東京科学大院試に向けて過去問を解いているけど、難しい!
と困っていませんか?
この記事では、2025年度東京科学大の物質理工学院応用化学系の無機化学の問題解答について、解説していきます!
問題(Ⅰ-2)はこちら(ホームページ)からダウンロードできます。
ぜひ、問題を解いてから読んでみてください!
こちらの解答は正式なものではなく、筆者が出した解答ですのでその点には十分注意してお読みください!

Ⅰー2(1)
① ・②
解答
①
ア 平面四角
イ 四面体
ウ 三重項
エ 0
オ 酸化
②
平面四角
四面体


解説
①と②はセットで解説します!
これらの問題のポイントは②のエネルギー準位図(d軌道の分裂図)を書けることです。
d軌道の分裂の書き方や覚え方についてはこちらの記事で解説しました。
まずは軌道の分裂についての考え方を理解したいという方はこちらを参照してください。

結論から言うと、平面四角と四面体の場合のd軌道の分裂の仕方は②の解答の通りです。
四配位の代表的な2つの幾何構造なので、分裂の仕方についてはしっかりおさえておきましょう!
また、Niは10族であり今回は2価イオンなので、d電子の数は8個となります。
なので、d電子を順に入れていくと解答のようになりますね。
さて、常磁性と反磁性について、
不対電子がある時は常磁性を示す
ことが知られています。
解答②のようにd電子を書いていくと、平面四角は全てスピン対であり、四面体は不対電子を持っています。
したがって、反磁性を示すのは平面四角(ア)、常磁性を示すのは四面体(イ)となります。
続いて、ウは正八面体錯体の場合のスピン多重度を考える問題です。
スピン多重度も不対電子の数が分かれば算出することが出来ます。
詳しくはこちらの記事を見てみてください!

正八面体の場合のd軌道の分裂及びそれらにd電子を8個入れた場合の図が以下の通りです。

スピン多重度2S+1は以下の①~③の手順で算出することが出来ます。
①電子のスピン量子数msの組み合わせを考える
②スピン量子数の総和MSを考える
③MSより、S及び2S+1(=スピン多重度)を算出する
今回の場合は不対電子が2個あるため、それぞれのスピンを平行にすると
MS=+1/2+1/2=+1(or-1/2-1/2=-1)
でMsの最大値がSになるので、S=1です。
(よくわからない場合は、先ほどの『スペクトル項』の記事をご参照ください)
よって、スピン多重度2S+1=3(ウ)となります。
続いて、錯体の中心金属の形式酸化数を求める問題です。
形式酸化数を求める方法については、こちらの記事で解説しました。

以下の記事の内容を抜粋すると、
一般式を[MXaLb]c+、金属の族数をNとして、形式酸化状態:a+c
と求めることが出来ます。
したがって、[Ni(CN)4]4- におけるNiの形式酸化数は、CNはX型配位子なので、4-4=0(エ)となります。
また、[Ni(CN)4]2- におけるNiの形式酸化数は4-2=+2であり、0→+2なので酸化(オ)です。
③
解答
2.83µB
解説
磁気モーメントを算出する問題です。
スピンオンリー磁気モーメントの式は以下の通りです。
$2\sqrt{S\left( S+1\right) }\mu _{B}$
この式は覚えておきましょう!
先に算出したとおりS=1なので、
$2\sqrt{1×2}\mu _{B}=$2\sqrt{2}\mu _{B}=2.828\mu_{B}=2.83\mu_{B}$
となります。
④
解答
歪みを生じることで、縮重していた eg 軌道が2つに分裂する。その結果、電子は低エネルギー側の軌道を優先的に占有できるため、錯体全体のエネルギーが低下し、より安定な状態となるから。
解説
まず、Cuは11族であり、錯体全体の価数が+2なのでd電子数は11-2=9個です。
正八面体は先ほど書いた通り低エネルギー側3つと高エネルギー側2つにd軌道が分裂するので、それに電子を配置すると下の画像の左のようになります。

となります。
ヤーン・テラー効果は、軌道が縮重かつ非対称に電子が占有されている時に起こる現象です。

今回の場合、eg軌道(dz²、dx²−y²)が縮重した状態で非対称に電子が占有されているため、ヤーン・テラー効果が起こる対象です。
これが歪むことにより、dz2軌道のエネルギーが低下し、dx2-y2のエネルギーが上昇します。
(この理由については、先ほどもご紹介しましたが以下の記事で解説しています。)

したがって、低エネルギーのdz2軌道に電子が2つ占有されることで、錯体全体のエネルギーが低下することになります。
この内容を2文でまとめるたのが解答例です。
解答をどう書くかは難しいですが、「縮重」と「軌道」という単語を使って、上記の内容を上手くまとめて解答しましょう!
⑤
解答

解説:
まず、問題文には「各CN配位子は、それぞれ1つのNi原子のみとη1型で配位している」との記述があります。
ηnは「ハプト数」と呼ばれ、右肩のnは「その配位子が形式的に結合できる原子の数」を意味する記号です。
このことを考慮して、対称性を考えると解答のような錯体になると考えられます。
「金属周りの立体化学が分かるように」とあるので、くさび型表記を用いて記載しました。
左側と右側でそれぞれ四面体を形成するように配置することがポイントです。
⑥(ⅰ)
解答
形成:Pd-C結合、Pd-Br結合
切断:C-Br結合
解説
この問題は「酸化的付加とはどのような反応か」を理解していれば解くことが出来ます。
結論から言うと、酸化的付加とは以下のような反応のことです。
酸化的付加…「X-Y分子が金属原子に付加するときにX-Y結合の開裂が起こり、新たにM-X結合とM-Y結合が生じる反応」
これを今回の場合に適用しましょう!
問題文より、「ブロモベンゼンがPd(Ph3)2に酸化的に対して酸化的付加し…」とあります。
なので、先の定義に照らし合わせるとXがC、YがBrです。
したがって、C-Br結合が開裂し、新たにPd-C結合とPd-Br結合が形成されることになるので、解答のようになります。
⑥(ⅱ)
解答例
酸化的付加により生成した4配位Pd単核錯体の中心金属の価電子数は16個である。ここに2個のPPhが配位子して6配位になると価電子数は20個となり、18電子則を満たさないから。
解説
問題文に「中心金属の価電子数の観点から…」とあるので、解答方針としては「①中心金属の電子数を求める→②18電子則を満たさない」になると予想できます。
したがって、酸化的付加が起こる前の錯体、起こった後の錯体、6配位錯体について中心金属の価電子数を求めましょう!

一般式を[MXaLb]c+、金属の族数をNとして、
形式酸化状態:a+c
中心金属の価電子数:N+a+2b-c
上記の計算の仕方に従って計算すると、以下のようになります。
Pd(PPh3)2→N=10、a=0、b=2、c=0より、中心金属の価電子数:10+0+4+0=14
Pd(PPh3)2PhBr→N=10、a=2、b=2、c=0より、中心金属の価電子数:10+2+4+0=16
Pd(PPh3)4PhBr→N=10、a=2、b=4、c=0より、中心金属の価電子数:10+2+8+0=20
よって、6配位錯体になると18電子則を満たすことが出来ません。
この結果を解答にまとめましょう!
ちなみに、18電子がなぜ安定かというと、CNのような強配位子場を持つ八面体錯体では、18電子配置で結合性軌道・非結合性軌道までが満たされ、反結合性軌道が空となるためです。
Ⅰー2(2)
解答
①
[CoCl(NH3)5]2+⇒=3
[Cr(H2O)6]2+⇒2
②

解説
この問題については、こちらの記事の終盤で解説しています。
あわせて、「内圏機構」と「外圏機構」への理解も深めることが出来るはずです!

最後に
いかがでしたか?
今回は、東京科学大学大学院(物質理工学院応用化学系)の無機化学の過去問を解説しました。
本サイトでは今後も有機化学・物理化学などの過去問解説も順次公開していきますので、ぜひ他の記事も参考にしてください!





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