[物理化学]2024東京科学大(旧東工大)材料系院試の過去問解答を無料公開!

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皆さんは、

東京科学大院試に向けて過去問を解いているけど、難しい!

過去問の解答が欲しい!

と思っていませんか?

この記事では、2024年入学東京科学大の物質理工学院材料系の物理化学の問題解答について、解説していきます!

問題(Ⅰ-3)はこちら(ホームページ)からダウンロードできます。

過去の入試問題 | Science Tokyo 受験生

ぜひ、問題を解いてから読んでみてください!

こちらの解答は正式なものではなく、筆者が出した解答ですのでその点には十分注意してお読みください!

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目次

Ⅰ-3(1)

直線分子、S=C=S Cがsp混成しており、2つのsp軌道が180°反対方向に広がっているため。 (or Cには孤立電子対が存在せず、結合電子による反発が最小になるように配置されるため)

解説

SとOはいずれも16族元素であるため、CS2はCO2と同様の構造をしています。

よって、CO2が直線分子であることからCS2も同様に直線分子であると連想しましょう!

これらが直線分子である理由について、混成軌道VSEPR則(電子反発)から答えるのが良いです。

混成軌道について、

Cは2つのSとp軌道で結合しているため、sp混成です。

sp混成の場合、この2つの混成軌道は180°反対方向に広がっているため、直線型となります。

また、VSEPR則について、

Cは2つのSと二重結合を形成しているため、孤立電子対が存在せずに結合電子のみです。

この2つの結合電子の反発は180°反対方向に配置されるときに最小になるため、直線型となります。

解説

結合振動は「伸縮振動」「変角振動」に大別することが出来ます。

伸縮振動…分子内の化学結合が伸縮する振動

変角振動…分子内の結合角が変化する振動

また、振動モードの数は原子の数と対応しており、直線形分子の場合は原子の数をNとして3N-5個の振動モードがあります。

よって、CS2の場合は、$3 \times 3 – 5 = 4$個の振動モードがあります。

4個の振動モードについて、

対称伸縮振動・非対称伸縮振動・(結合をx軸とした時)変角振動(y軸方向)、変角振動(z軸方向)

があります。

今回の問題を解く上で必要な知識は、

双極子モーメントが変化しないとき、赤外不活性である

ということです。

すなわち、対称伸縮振動は赤外不活性となります。

したがって、観測された2つの吸収バンドに対応する振動モードは、非対称伸縮振動変角振動です。

なので、これらの振動モードを図示しましょう。

また、変角振動は軸方向のみの違いなのでエネルギーは同じであるため、縮重しています!

対称伸縮振動、1、ラマン分光法

解説

②で解説したように、対称伸縮振動は赤外不活性となります。

一方で、CS2の対称伸縮振動のように、電子の分極率が変化する(電子雲の大きさが変化する)時は、ラマン活性です。

ここで、ぜひ覚えておきたいのが、

分子が対称中心を持ってる場合、赤外活性とラマン活性になる振動モードがない

ということであり、このことを相互禁制律と呼びます。

覚えておきましょう!

また、先に解説したように変角振動は2つありますが、対称伸縮振動は1つのみです。

$0.049\,eV$

解説

プランク定数を$h$、光速を$c$、波数を${\tilde \nu }$とした時、エネルギー差は、

$hc\tilde \nu = \frac{{6.6 \times {{10}^{ – 34}}\,J\,s \times 3.0 \times {{10}^{ – 8}}\,m\,{s^{ – 1}} \times 39700\,{m^{ – 1}}}}{{1.6 \times {{10}^{ – 19}}\,C}}$

$0.049\,eV$

エネルギーの単位をJとしても算出できますが、電気素量が与えられているので単位をeVとしました。

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Ⅰ-3(2)

$\frac{{d[A]}}{{dt}} = – ({k_1} + {k_2})[A]$

$\frac{{d[A]}}{{[A]}} = – ({k_1} + {k_2})dt$

$\int_{{{[A]}_0}}^{[A]} {\frac{{d[A]}}{{[A]}}} dt = – \int_0^t {({k_1} + {k_2})} dt$

$\therefore [A] = {[A]_0}{e^{ – ({k_1} + {k_2})t}}$

$\frac{{d[B]}}{{dt}} = {k_1}[A] = {k_1}{[A]_0}{e^{ – ({k_1} + {k_2})t}}$

$[B] = \frac{{{k_1}}}{{{k_1} + {k_2}}}{[A]_0}\left( {1 – {e^{ – ({k_1} + {k_2})}}} \right)$

同様にして、

$[C] = \frac{{{k_2}}}{{{k_1} + {k_2}}}{[A]_0}\left( {1 – {e^{ – ({k_1} + {k_2})}}} \right)$

解説

以下の微分方程式を立てられるかが重要です!

$\frac{{d[A]}}{{dt}} = – ({k_1} + {k_2})[A]$
$\frac{{d[B]}}{{dt}} = {k_1}[A]$
$\frac{{d[C]}}{{dt}} = {k_2}[A]$

これらの微分方程式を解いていきましょう。

まずは、Aについての微分方程式を解き、その結果を用いてBとCについての微分方程式を解けばよいです。

また、グラフは解答のようになります。

時間経過とともに、Aは低下していき、BとCは増加していきます。

ここで問題文より、${k_1} > {k_2}$なので、Bの方が増加率が大きいことがポイントです!

こちらのサイトで簡単にグラフを作成できるので、ぜひ使ってみてください!

競争反応(並発反応)



$\frac{{d[A]}}{{dt}} = – {k_3}[A]$
$\frac{{d[B]}}{{dt}} = {k_3}[A] – {k_4}[B]$
$\frac{{d[C]}}{{dt}} = {k_4}[B]$

$[C] = {[A]_0}\left( {1 + \frac{1}{{{k_4} – {k_3}}}\left( {{k_3}{e^{ – {k_4}t}} – {k_4}{e^{ – {k_3}t}}} \right)} \right)$

解説

1階線形微分方程式を解く問題です!

分からない方は解き方を必ず覚えておきましょう!

$\frac{{d[A]}}{{dt}} = – {k_3}[A]$

$\int_{{{[A]}_0}}^{[A]} {\frac{{d[A]}}{{[A]}}} dt = – \int_0^t {{k_3}} dt$

$\therefore [A] = {[A]_0}{e^{ – {k_3}t}}$

$\frac{{d[B]}}{{dt}} = {k_3}[A] – {k_4}[B] = {k_3}{[A]_0}{e^{ – {k_3}t}} – {k_4}[B]$

ここで、対応する斉次方程式を考えます(これが1階線形微分方程式を解くポイントです!)。

$\frac{{d[B]}}{{dt}} + {k_4}[B] = 0$

$\therefore [B] = C{e^{ – {k_4}t}}$

ここで、定数Cをtの関数として、

$[B] = C(t){e^{ – {k_4}t}}$

$\frac{{d[B]}}{{dt}} – {k_3}{[A]_0}{e^{ – {k_3}t}} + {k_4}[B]$

$ = C'(t){e^{ – {k_4}t}} – {k_4}C(t){e^{ – {k_4}t}} – {k_3}{[A]_0}{e^{ – {k_3}t}} + {k_4}C(t){e^{ – {k_4}t}}$

$ = C'(t){e^{ – {k_4}t}} – {k_3}{[A]_0}{e^{ – {k_3}t}} = 0$

$C'(t) = {k_3}{[A]_0}{e^{\left( {{k_4} – {k_3}} \right)t}}$

$C(t) = \frac{{{k_3}}}{{{k_4} – {k_3}}}{[A]_0}{e^{\left( {{k_4} – {k_3}} \right)t}} + {C_1}$

$[B] = \left( {\frac{{{k_3}}}{{{k_4} – {k_3}}}{{[A]}_0}{e^{\left( {{k_4} – {k_3}} \right)t}} + {C_1}} \right){e^{ – {k_4}t}}$

$\frac{{{k_3}}}{{{k_4} – {k_3}}}{[A]_0} + {C_1} = 0$

${C_1} = – \frac{{{k_3}}}{{{k_4} – {k_3}}}{[A]_0}$

$[B] = \left( {\frac{{{k_3}}}{{{k_4} – {k_3}}}{{[A]}_0}{e^{\left( {{k_4} – {k_3}} \right)t}} – \frac{{{k_3}}}{{{k_4} – {k_3}}}{{[A]}_0}} \right){e^{ – {k_4}t}}$

$ = \frac{{{k_3}}}{{{k_4} – {k_3}}}{[A]_0}\left( {{e^{ – {k_3}t}} – {e^{ – {k_4}t}}} \right)$

$[C] = {[A]_0} – [A] – [B]$より、

$ = {[A]_0} – {[A]_0}{e^{ – {k_3}t}} – \frac{{{k_3}}}{{{k_4} – {k_3}}}{[A]_0}\left( {{e^{ – {k_3}t}} – {e^{ – {k_4}t}}} \right)$

$[C] = {[A]_0}\left( {1 + \frac{1}{{{k_4} – {k_3}}}\left( {{k_3}{e^{ – {k_4}t}} – {k_4}{e^{ – {k_3}t}}} \right)} \right)$

図1:競争反応、図2:逐次反応

解説

名称は見た目通りですね。

図1は併発、並行、並列反応などいくつかの呼び方があるようです。

ぜひ、覚えておきましょう!

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最後に

いかがでしたか?

今回は、2024年度東京科学大院試の材料系の物理化学の問題について解説してきました。

今後も過去問の解説をどんどんしていきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね!

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この記事を書いた人

国立大学の化学科を首席で卒業!
現在はメーカー勤務の社会人です。
自身の経験を基に、勉強法や院試過去問解説などをしています!
詳しくはこちらのXから
https://x.com/percussion_lab

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