、
東工大院試に向けて過去問を解いているけど、難しい!
過去問の解答が欲しい!
と思っていませんか?
この記事では、2024年入学東工大の物質理工学院応用化学系の無機化学の問題解答について、解説していきます!
問題(Ⅱ-2)はこちら(東工大ホームページ)からダウンロードできます。
ぜひ、問題を解いてから読んでみてください!
こちらの解答は正式なものではなく、筆者が出した解答ですのでその点には十分注意してお読みください!
Ⅱ-2(1)
①
解答
B
解説
イオン半径についての問題です。
まず、同じ族では周期表の下にいくほど原子半径も大きくなるので、当然イオン半径も大きく(キ)なります。
続いて、配位数とイオン半径の関係について。
復習すると、配位数とは(主に)カチオンの周囲にあるアニオンの数のことです。
イオン結晶では、カチオンは周囲のアニオンの全てと接する必要があります。
つまり、カチオンが小さい場合はその周径も小さいので接することができるアニオンの数は少ないです。
一方で、カチオンが大きければ周径も大きいため、接するアニオンの数は多いと言えます。
したがって、配位数が増加するほどイオン半径は大きく(ク)なるということができますね!
最後に、ある元素について正電荷が増加すると、より電子が原子核に引き寄せられるため、イオン半径は小さく(ク)なります。
以上より、キ:大きく、ク:大きく、ケ:小さくなので解答はBと結論づけることができます!
②・➂
解答
② ア. 4 イ. 8 ウ. 4
➂ ア. ZnS イ. CaF2 ウ.ZnS エ. CaTiO3 オ. TiO2 カ. MgAl2O4
解説
この②と➂はある程度暗記が必要なので、この機会にまとめて覚えていきましょう!
まず、記憶しておきたいのがZnSの結晶構造。
ZnS結晶構造で覚えておきたいのが、
閃亜鉛鉱型構造とウルツ鉱型構造
の2種類です!
閃亜鉛型構造は、ダイヤモンド構造とのC原子をイオンに置き換えたものなので、覚えやすいですよね!
いずれの構造でも、カチオンは図のように隣接する4つのアニオンに囲まれているため、カチオンの配位数は4(②・アとウ)です。
続いて、蛍石型構造も抑えておきましょう!
これは、閃亜鉛型構造とかなり類似しています。
閃亜鉛型構造…アニオンが構成する面心立方構造の隙間の半分にカチオンが入った構造
蛍石型構造…カチオンが構成する面心立方の隙間の全てにアニオンが入った構造
です。
こちらの図を見てみると納得できるのではないでしょうか?
アニオンはカチオンの2倍の数あるので、閃亜鉛型構造とは異なってカチオンの配位数は8(②・イ)となります。
ちなみに、蛍石型構造のアニオンとカチオンを逆にした逆蛍石型構造もあります(蛍石型:CaF2→逆蛍石型:K2O)。
特に必ず覚えておきたい有名どころはこのあたりですね!
この他に、二元系AXnの有名な構造としてはルチル型構造、三元系AaBbXnとしてはペロブスカイト型構造とスピネル型構造があります。
以上のことを頭に入れて、➂の問題について考えてみましょう!
まず、高校化学の知識からNaClとCsClは除外できます。
また、先ほど記載したように閃亜鉛型構造とウルツ型構造はZnS、高校化学でも出てきたと思いますが蛍石はCaF2です(K2Oは逆蛍石型)。
残りの二元系はTiO2だけなので、これがルチル型構造です。
ペロブスカイト型は最近『ペロブスカイト太陽電池』としても有名なので、これがABO3型であることは覚えておいた方が良いです。
CaTiO3(“カチオンさん”)と覚えておいてもいいかもですね(笑)
最後に、三元系の消去法でMgAl2O4はスピネル型構造となります。
二元系(AX2)
ZnS…閃亜鉛型・ウルツ鉱型
CaF2…蛍石型 (K2O…逆蛍石型)
TiO2…ルチル型
三元系(AaBbXn)
CaTiO3…ペロブスカイト型
MgAl2O4…スピネル型
④
解答
題意の結晶構造は塩化ナトリウム型の結晶構造である。
この一面を切り出し、下図のような結晶が崩壊しない直前の状態、すなわちアニオン同士が接触している状態を考える。
この時、以下の式が成り立つ。
2(r++r–)=√2×2r–
(r++r–)/r–=√2
r+/r–=√2-1=0.414
アニオン同士が接触しない状態であれば結晶構造が安定であるといえ、すなわちイオン半径比がこれよりも大きければ安定であると言える。
したがって、題意の結晶構造の時はイオン半径比が0.414よりも大きくなる。
解説
限界イオン半径比の問題です。
高校化学でも類似問題を解いたことがあるという方も多いのではないでしょうか?
まず、『最密充填であるアニオンの八面体間隙にカチオンが入る』という問題文から結晶構造を読み取る必要があります。
結論から言うと、これは塩化ナトリウム型構造です。
こちらの動画でもあるように、まず八面体間隙とは6個のアニオンに囲まれてできる隙間のことです。
Cl–を最密充填し、その八面体間隙にNa+を入れることで塩化ナトリウム型構造を得ることができます!
これさえ分かってしまえば、計算は比較的楽と言えるでしょう!
後は解答の書き方が難しいかもしれませんが、解答のように図を用いながら記述していくのが良いと思います!
Ⅱ-2(2)
①
解答
シ. 減少 ス. 電子 セ.n ソ. 正孔 タ. p
解説
本文に記載されているように、金属導体と半導体では電気伝導率の温度特性が異なります。
導体…温度上昇によって電気伝導率が減少
半導体…温度上昇によって電気伝導率が増加
電気伝導率は主にキャリアの移動度と密度に依存しており、
電気伝導率∝(キャリア移動度)・(キャリア密度)
です。
移動度
温度上昇により物質中の原子の振動が大きくなり、キャリアとの衝突頻度が増大(=キャリアが進みにくくなる)
よって、導体・半導体ともに温度上昇によって移動度は低下
キャリア密度
導体…温度上昇に影響されない
半導体…温度上昇によってキャリア密度は増加
半導体ではキャリア密度の影響が一般に大きいです。
以上より、導体と半導体では温度特性が逆になります!
続いて、真性半導体に不純物を意図的に添加することによって、n型半導体やp型半導体を得ることができます。
n型(=negative)半導体…多数キャリアは自由電子
p型(=positive)半導体…多数キャリアは正孔
どのような不純物を添加するとn型及びp型になるのかは、周期表の族番号を見ればわかります。
ケイ素結晶(= 14族)に不純物としてヒ素(=15族)を添加すると…
ヒ素はケイ素より荷電子が1個多いので、それが自由電子のように振る舞うことでn型半導体となります。
一方で、不純物としてガリウム(=13族)を添加すると…
ガリウムはケイ素より荷電子が1個少ないので、それが正孔のように振る舞うことでp型半導体となります。
以上のことから、解答のようになります。
②
解答
(a)増加する
(b)伝導帯に存在する電子が電気伝導に寄与する。温度が上昇すると、より多くの電子が価電子帯から伝導帯へと移動し、伝導帯の電子密度は増加する。したがって、温度の上昇とともに電気伝導率は増加する。
解説
①に記載したように、半導体の電気伝導率は温度上昇によって増加します!
これは先ほど解説したようにキャリア密度の影響です。
半導体には価電子帯と伝導帯があり、その差がバンドギャップと言われています。
バンドギャップを乗り越える以上のエネルギーが与えられると、価電子帯から伝導帯へと電子が移動します。
温度が上昇すると当然エネルギーが大きくなるので、よって伝導帯に存在する電子密度は増加していきます。
したがって、電気伝導率は温度上昇とともに増加するということができます!
Ⅱ-2(3)
①
解答
酢酸ナトリウムCH3COONaは完全に電離していると考えられるので、
となる。
これに加えて、水素イオンの濃度[H+]をC(mol L-1)として酢酸の電離を考慮すると、
が成り立つ。
ここで、酢酸の電離は十分に小さいと考えられるので、0.050 >>C すなわち 0.050-C≒0.050及び0.10+C≒0.10と言える。
したがって、
[CH3COOH]=0.050 mol L-1、[CH3COO–]=0.10 mol L-1 より、
Ka =[CH3COO–][H+]/[CH3COOH] =0.10[H+]/0.050=2[H+]
∴ [H+]=Ka/2=10-5/2=5.0×10-6
解説
酢酸と酢酸ナトリウムから構成される緩衝液の問題です。
高校化学でもおそらく解いたと思うので、それほど難しくはないでしょう!
ただ、解答としてpHではなく水素イオン濃度が求められているということに注意してください!
②
解答
チ. 6 ツ. 3 テ. 2 ト. 7 ナ. [Al(H2O)6]3+ ニ. [Al(OH)4(H2O)2]–
(Al2O3(s)+6H3O+(aq)+3H2O(l)→2[Al(H2O)6]3+(aq))
(Al2O3(s)+2OH– (aq) +7H2O(l)→ 2[Al(OH)4(H2O)2]–(aq))
解説
両性酸化物であるAl2O3を酸・塩基と反応させた時の反応式を書く問題です。
高校化学でも類似した問題があったと思いますが、高校では[Al(OH)4]–といったように水配位子(アクア)を書くことはありませんでした。
しかし、実際にはAlは6配位の錯イオンを形成するので、[Al(H2O)6]3+や[Al(OH)4(H2O)2]– というように アクアが配位しています。
この問題の肝は、この『Alの配位数が6』であるということでしょう!
両性酸化物は一度H2Oと反応させてから、酸塩基と反応させると反応式が書きやすいです。
具体的には、
酸との反応式
Al2O3(s)+3H2O(l)→2Al(OH)3 …①
2Al(OH)3+6H3O+(aq)→2[Al(H2O)6]3+(aq) …②
①+②
Al2O3(s)+6H3O+(aq)+3H2O(l)→2[Al(H2O)6]3+(aq)
塩基との反応式
Al2O3(s)+3H2O(l)→2Al(OH)3 …①
2Al(OH)3+2OH–(aq)+4H2O(l)→2[Al(OH)4(H2O)2]–(aq)…➂
①+➂
Al2O3(s)+2OH–(aq)+7H2O(l)→ 2[Al(OH)4(H2O)2]–(aq)
このように、H2Oと反応させると反応式が書きやすいので、ぜひ活用してみてください!
最後に
いかがでしたか?
今回は、2023年度東工大院試の応用化学系の無機化学の問題について解説してきました。
今後も過去問の解説をどんどんしていきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね!
コメント