皆さんは、
東京科学大院試に向けて過去問を解いているけど、難しい!
過去問の解答が欲しい!
と思っていませんか?
この記事では、2024年入学東京科学大の物質理工学院応用化学系の物理化学の問題解答について、解説していきます!
問題(Ⅱ-3)はこちら(ホームページ)からダウンロードできます。
ぜひ、問題を解いてから読んでみてください!
こちらの解答は正式なものではなく、筆者が出した解答ですのでその点には十分注意してお読みください!


Ⅱ-3(1)
①
ア $ – k[A]$
イ $ – kdt$
ウ $ – k\int_0^t {dt} $
エ $ – kt$
オ ${e^{ – kt}}$
解説
問題文に沿って微分方程式を解いていきましょう!
一次反応の速度式が、
$\frac{{d[A]}}{{dt}} = – k[A]$
で書けることさえ分かれば、解けるはずです。
②
$0.015\,{s^{ – 1}}$
解説
半減期を${{t_{1/2}}}$とします。上記式(ⅰ)を変形して、
$k =- \frac{1}{{{t_{1/2}}}}\ln \left( {\frac{{\frac{1}{2}{{[A]}_0}}}{{{{[A]}_0}}}} \right)= – \frac{1}{{{t_{1/2}}}}\ln \left( {\frac{1}{2}} \right) = \frac{{\ln 2}}{{{t_{1/2}}}}$
となります。ここで、表より${t_{1/2}} = 45\,s$であるから、
$k = \frac{{\ln 2}}{{45}} = \frac{{0.69}}{{45}}$
≒$0.015\,{s^{ – 1}}$
と求めることが出来ます。
③
$1.1 \times {10^2}\,kJ\,mo{l^{ – 1}}$
解説
340 K(=${{T_1}}$)と350 K(=${{T_2}}$)のそれぞれの反応速度定数を${{k_1}}$と${{k_2}}$とする。
$\frac{{{k_2}}}{{{k_1}}} = 3 = \frac{{{A_0}\exp \left( { – \frac{{{E_a}}}{{R{T_2}}}} \right)}}{{{A_0}\exp \left( { – \frac{{{E_a}}}{{R{T_1}}}} \right)}}$
$3 = \exp \left( {\frac{{{E_a}}}{R}\left( {\frac{1}{{{T_1}}} – \frac{1}{{{T_2}}}} \right)} \right)$
${E_a} = \ln 3 \times R{\left( {\frac{1}{{{T_1}}} – \frac{1}{{{T_2}}}} \right)^{ – 1}}$
$ = \ln 3 \times R \times \frac{{{T_1}{T_2}}}{{{T_2} – {T_1}}}$
$ = 1.1 \times 8.3 \times 11900$
≒$1.1 \times {10^2}\,kJ\,mo{l^{ – 1}}$
となります。
Ⅱ-3(2)
①
(a) 2
(b) A:B=0.77:0.23、A:B=0.11:0.89
(c) Aを多く含む相をα相、Bを多く含む相をβ相とし、それぞれの相の物質量を${n_\alpha }$、${n_\beta }$とする。
また、液体Bのモル分率0.35における定組成線と(カ)と(ク)の連結線の交点を点(ケ)として、線分カケの長さを${l_\alpha }$、線分ケクの長さを${l_\beta }$とする。
このとき、てこの規則より、
$\frac{{{n_\alpha }}}{{{n_\beta }}} = \frac{{{l_\beta }}}{{{l_\alpha }}}= \frac{{0.89 – 0.35}}{{0.35 – 0.23}} = \frac{{0.54}}{{0.11}}$
≒$4.9$
したがって、α相とβ相の物質量比は4.9:1となる。
解説
上に凸の形をした液-液相図の問題です。
ここで、語句の確認ですが相分離を起こす温度の上限である図のT2を、
上部臨界溶解温度
と呼びます。
つまり、T2より低温側は相分離していると言い換えることが出来ます。
したがって、T1における混合物は相分離しているのでP=2です。
T1の温度で相分離すると、組成が図の(カ)である相と組成が(キ)である相に分離します。
モル分率の合計は1なので、
一方の相の組成は、A:B=0.77:0.23 (カ)
他方の相の組成は、A:B=0.11:0.89 (キ)
となります!
また、物質量比を求めるには「てこの規則」を用います。
「てこの規則」とは…
てこの規則を用いると、平衡にある2つの相αとβの相対的な物質量を求めることが出来ます。
下図のように、水平に引いた連結線に沿って${l_\alpha }$と${l_\beta }$を測りとり、α相の物質量を${n_\alpha }$とβ相の物質量を${l_\beta }$とします。
この時、
${n_\alpha }{l_\alpha } = {n_\beta }{l_\beta }$
が成り立つのが「てこの規則」です。
アトキンス物理化学(上)第10版 p219
したがって、このてこの規則を用いると解答のように求めることが出来ます!
②
(a) P=1、F=2
(b) 低温では同種同士の引力相互作用が働くことで相分離した方がエネルギーが低く安定であるため、相分離している。しかし、T2を超えると熱運動により混合エントロピーが上昇し、混合ギブズエネルギーが低下することで均一状態が安定となるため、T2より高い温度の領域では単一相となる。
解説
このような上に凸の液-液相図では、T2より高い温度の領域では単一相(P=1)になります。
この理由は(b)に書いている通りです。
続いて、相律の式は、
$F’ = C – P + 2$
です。ここで、$F’$は可変度、$C$は成分の数、$P$は平衡にある相の数を表しています。
ただし、この問題で注意が必要な点は、問題文より圧力が一定であることです。
よって、可変度は1つ分少なくなるのでこの時の相律の式は、
$F = C – P + 1$
となります。したがって、$F = 2 – 1 + 1 = 2$となります。
最後に
いかがでしたか?
今回は、2024年度東京科学大院試の応用化学系の物理化学の問題について解説してきました。
今後も過去問の解説をどんどんしていきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね!



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