[無機化学Ⅰ]2024東京科学大(旧東工大)院試の過去問解答を無料公開!

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皆さんは、

東京科学大院試に向けて過去問を解いているけど、難しい!

過去問の解答が欲しい!

と思っていませんか?

この記事では、2024年入学東京科学大の物質理工学院応用化学系の無機化学の問題解答について、解説していきます!

問題(Ⅰ-2)はこちら(ホームページ)からダウンロードできます。

過去の入試問題 | Science Tokyo 受験生

ぜひ、問題を解いてから読んでみてください!

こちらの解答は正式なものではなく、筆者が出した解答ですのでその点には十分注意してお読みください!

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目次

Ⅰ-2(1)

 1
 t2g
 t2g
 eg
 eg*
カ 9
キ 1
ク 2

ヤーン・テラー

A

ClやOHはπ供与体配位子であり、配位子の満たされたπ軌道のエネルギーは金属のd軌道のエネルギーよりも低い。この時に錯体を形成する場合、π軌道から供給される電子は結合性軌道を占有し、d電子は反結合性軌道を占有する。よって、配位子場分裂パラメータは小さくなるため、OHやClの分光化学系列はπ効果がないNH3よりも低くなる。

解説

①~④の問題まで、一気に解説します!

まず、d電子数の数え方については、こちらの記事で解説しました。

配位子にはX型配位子L型配位子の2種類があり、

この記事の一部を抜粋すると、錯体の電子数は以下のように計算することが出来ます。

一般式を[MXaLb]c+、金属の族数をNとして、

形式酸化状態:a+c

総電子数:N+a+2b-c

d電子数:N-(形式酸化状態)=N-a-c

H2O配位子はL型の配位子であり、Tiの族番号は4であるので、

d電子数:4-3=1(ア)

となります。

また、総電子数:4+2×6-3=13であり、問題図1にある「八面体形錯体の分子軌道エネルギー準位」を下から埋めていくと、a1g、t1u、eg軌道は埋まり、1個のd電子はt2g軌道(イ)に収容されます。

すなわち、光を吸収すると、t2g(ウ)から1個上の分子軌道であるeg(エ)へと遷移します。

続いては、『分光化学系列』の問題です。

分光化学系列…八面体錯体のd-d遷移エネルギーの大きさ(=配位子分裂パラメータ、結晶場分裂パラメータ)の順に配位子(金属イオン)を並べたもの

(一部抜粋) I < Br < Cl < F < OH <H2O <NH3 < CN <CO

分光化学系列において、H2OよりもNH3高い(ⅰ)位置にあります。

これは、[Ti(OH2)6]3+よりも[Ti(NH3)6]3+の方が、t2gとeg*のエネルギー差Δoが大きいことを意味しています。

よって、[Ti(NH3)6]3+はより大きいエネルギー(短波長)の光を吸収するので、高エネルギー側(ⅱ)に吸収極大が観測されると考えられます。

[Ti(NH3)]3+の方がΔoが大きいということは、eg*(オ)のエネルギーがより高いと言い換えることが出来ます。

ここからは、Cu錯体に関する問題です。

後に述べますが、いったん問題文からd電子数は9(カ)であるとして考えます。

正方ひずみについては、こちらの記事で解説しました。

この場合の分子軌道を書いた図がこちらのようになります。

しっかりと理解していれば、d軌道の形を暗記するだけで書けるので、よくわからないという方はぜひ先の記事を参考にしてみてください!

d電子の数が9個だとすると、dx2-y2軌道に1個(キ)dz2軌道に2個(ク)の電子が収容されます。

このような現象はヤーン・テラー(ケ)効果と呼ばれています。

それで、先に飛ばしたd電子数の問題について考えていきます

d電子数を先と同様に数えると、ClはX型配位子Cuは11族元素なので、

d電子数:11-6-2=3となります。

ただ、ヤーン・テラー効果はd3錯体では起こりません。

また、dx2-y2軌道dz2軌道を占有する電子の数を聞かれることから、(両方0は問題として成立しないので)7以上になると考えられます(この場合、ヤーン・テラー効果が起こるとしたら7 or 9です)。

それで、ClをなぜかわかりませんがL型配位子とすればd電子数:11-2=9となるので、辻褄が合います。
(そもそも[CuL6]2+がヤーン・テラー効果を起こすは有名です)

また、ネットで調べると[CuCl6]4-は出てきました(これもd電子数が9になるので、ヤーン・テラー効果を起こします)。

正直、どこか考え方が正しくないのかもしれません。すみません…。

ただ、問題的にはおそらくd電子数が9と考えるのが正しいはずです。

最後に、④について解説します。

まず、先に書いたように、

分光化学系列』は、d-d遷移エネルギーの大きさ(配位子分裂パラメータ)の順に配位子を並べたものです。

なので、OHやClの錯体はNH3の錯体に比べ、この遷移エネルギー差が小さいことに言及すればよい言えます。

続いて、配位子にはπ結合の効果を持つ主に2種類の配位子が存在します。

π供与体配位子…結合前からπ軌道が占有されている配位子(Br,Cl, OH,H2Oなど)

π受容体配位子…電子を受け入れられる空のπ軌道を持つ配位子(CO, N2など)

ClやOHはπ供与性配位子であり、NH3はπ効果を持たない配位子です。

π供与体配位子について

(『シュライバー・アトキンス無機化学(下)第6版』 p621より引用)

π供与性配位子の場合、上図のようにπ軌道が満たされています。

この場合、配位子のπ軌道は通常金属のd軌道のエネルギーより低いです。

金属と配位子で錯体を形成すると、図のように結合性軌道と反結合性軌道が生じ、π軌道の電子は結合性軌道に、d軌道の電子は反結合性軌道に入ります。

よって、d-d遷移エネルギーの大きさ(配位子分裂パラメータΔo)は小さくなるので、OHやClの分光化学系列はNH3と比較すると、小さくなります。

Ⅰ-2 (2)

形式酸化数:+1

中心金属まわりの価電子数の総和:16

解説

ClはX型COとPPh3はL型配位子なので、一般式にすると[IrXL3]となります。また、Irは9族元素です。

よって、

形式酸化状態:+1

価電子数の総和:9+1+2×3=16

となります。

解説

配位子が3種類である[MA2B2]の場合、シス体とトランス体の2つの幾何異性体が存在します。

今回の場合、PPh3をシス及びトランスに配置した異性体を書けばよいです。

酸化的付加は金属元素による電子の逆供与を介するので、これを起こすには金属が配位子と結合していないd電子を有している必要がある。[IrClCO(PPh3)2]のd電子数は8である一方、[Zr(η5-C5H5)2HMe]のd電子数は0である。したがって、[Zr(η5-C5H5)2HMe]は酸化的付加が進行しない。

解説

まず、[Zr(η5-C5H5)2HMe]d電子数について考えましょう。

η5-C5H5はL2X型配位子HとMeはX型配位子なので、一般式にすると[ZrX4L4]です。また、Zrは4族元素です。

したがって、d電子数:4-4=0となります。

一方で、[IrClCO(PPh3)2]はd電子数:9-1=8です。

酸化的付加はその名の通り、付加によって酸化数が増加します。

つまり、HはX型配位子であり、酸化的付加を起こす場合は金属も電子を出す必要があります(逆供与)。

X型配位子についても、こちらの記事で解説しています。

よって、酸化的付加にはd電子が必要となるので、d電子を持たない[Zr(η5-C5H5)2HMe]は酸化的付加が起こらないと言えます。

解説

アキラルということは、対称面を持つと言えます。

なので、対称面を有する異性体を考えましょう!

ただし、2つのHは酸化的付加によるので、これらがcis配置であるという制限があります。

この条件下で考えると、上記の2種類が考えられます。

最後に

いかがでしたか?

今回は、2024年度東京科学大院試の応用化学系の無機化学の問題について解説してきました。

今後も過去問の解説をどんどんしていきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね!

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この記事を書いた人

国立大学の化学科を首席で卒業!
現在は大学院で有機化学を専攻中です。
自身の経験を基に、勉強法や院試過去問解説などをしています!
詳しくはこちらのXから
https://x.com/percussion_lab

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