【6 Stepで書く】分子軌道のエネルギー準位図の書き方を解説!

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大学化学で最初に学ぶ分子軌道エネルギー準位図ですが、これらは少しとっつきにくいですよね。

『エネルギー準位図の書き方が分からない』

『分子軌道を書くのが難しい!』

と思っているのではないでしょうか?

エネルギー準位図は、

『6 Step』

で書くことが出来ます!

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目次

まずは軌道について理解しよう!

分子は原子同士が組み合わさったものです!

なので、分子軌道のエネルギー準位図を書くには、原子軌道でエネルギー図を書ける必要があります。

今回はMO理論のエネルギー準位図を書くことがメインなので、原子軌道については簡潔に。

結論から述べると、

・原子軌道にはs軌道、p軌道、d軌道、f軌道…がある

・主量子数nの場合、ns軌道、np軌道、nd軌道…となり、主量子数が大きいとエネルギーも大きくなる

・1つの軌道を最大2個の電子が占有する

これを頭に入れて置いて、エネルギー準位図の書き方を学びましょう!

基礎:水素のエネルギー準位図の書き方を理解しよう!

一番簡単な例として、H2のエネルギー準位図を考えてみましょう!

図にまとめると、以下のようになります。

これらについて①から順に解説していきます!

①縦軸をエネルギーにする

まずは、上図のように上向きの矢印を書き、エネルギーが高いほど上、エネルギーが低いほど下とします。

エネルギー準位図なので、まずはエネルギーの位置関係を示すことが必要です。

②水素原子のエネルギー準位図を書く

続いて、真ん中に分子軌道のエネルギー準位図を書けるスペースを空けて、原子のエネルギー準位図を書いていきます。

今回の例ではH2の分子軌道を書くことが目標なので、水素原子の軌道を左側と右側に書けばよいです。

原子軌道について水素原子は皆さんご存じの通り、電子を1つ有しています。

軌道で考えるならば1s軌道のみに電子が1つ入っています。

よって、各々に1s軌道を書いて、そこに電子を示す上矢印を書けばOKです。

③できる分子軌道を考える

まずは、

原子軌道の数と分子軌道の数は同じ

ということを覚えておきましょう!

つまり、2つの原子軌道が組み合わさると、2つの分子軌道が生成されます。

今回の場合は、2つの1s軌道が組み合わさるので、2つの分子軌道が生成されるということです。

加えて、原子軌道同士が組み合わさると結合性軌道と反結合性軌道が生成されます。

(非結合性軌道というものもありますが、ここでは割愛します。)

電子は波の性質を持つので2つの波が重なる場合は、同位相で重なる(強め合う)場合逆位相で重なる(弱め合う)場合の2種類があります。

下図のように、

・同位相で重なる→より安定な軌道=結合性軌道ができる

・逆位相で重なる→より不安定な軌道=反結合性軌道できる

となります。

したがって、今回の場合は2つの1s軌道が重なることで、1つの結合性軌道と1つの反結合性軌道が出来ます。

これは、最初に示した『原子軌道の数と分子軌道の数は同じ』も満たしていますね!

④分子軌道をエネルギー準位図に書き入れる

続いて、③で考えた分子軌道をエネルギー準位図に書き入れていきます。

先に述べた通り、結合性軌道反結合性軌道が出来、前者は低エネルギー、後者は高エネルギーなので上図のように書くことが出来ます。

ここで、図ではσ1sσ*1sと表記しました。

分子軌道の重なり方によって、σ軌道もしくはπ軌道が生成されます(ここではδ軌道については割愛します)。

σ軌道π軌道は以下の通りです。

・結合軸に沿って重なる⇒σ軌道

・結合軸に垂直な向きで重なる⇒π軌道

となります。文字だと分かりにくいので、以下の図を見て理解してください!

図のように、s軌道同士の重なりの場合はσ軌道が生成されます。

したがって、今回の水素の場合は、2つのσ軌道が生成され、1つの結合性軌道=σ軌道と1つの反結合性軌道=σ*軌道となります。

反結合性軌道は*をつけるのが一般的なので、ぜひこれは覚えておきましょう!

⑤分子軌道に電子を書き入れる

④までのステップで分子軌道を書いたので、分子軌道に電子を書き入れていきます。

電子の総数は分子軌道になっても不変です。

なので、今回の場合は1つの電子を持つH原子が組み合わさるので、H2分子軌道に電子が2つ入ることになります。

続いて、この2つの電子をどのように分子軌道に入れていくか。

電子を入れるときのルールは以下の3つです。

①構成原理…エネルギーの低い軌道から電子を入れる

②フントの規則…同じエネルギーの軌道にはまず1個ずつ電子を入れる

③パウリの排他原理…1軌道に最大2電子、スピンは逆向き

これらを覚えておきましょう!

これらのルールに従うと、水素分子の場合はσ1s軌道に2電子が逆向きのスピンが入ることになるので、下のような図を書くことが出来ます。

これでエネルギー準位図が完成です!

⑥結合次数を考える

⑤まででエネルギー準位図自体は完成ですが、多くの場合に図とセットで答える必要があるのが、『結合次数』です。

結合次数は以下の式に従って計算することが出来ます。

結合次数とは、

『原子同士がどれくらい強く結合しているかを表す数』

です。

実際の計算方法は、

$\frac{結合性軌道の電子数ー反結合性軌道の電子数}{2}$

から計算することが出来ます!

例えば、今回のH2の場合は、

\frac{2-0}{2}=1$

となります。

結合次数が整数値の場合、その多くが結合の本数と一致します。

例えば、H2の場合は結合次数は1なので単結合です。

また、N2の場合は結合次数が3なので三重結合となります。

このように、結合次数は結合の強さを知るのに便利な指標です!

応用:酸素の分子軌道を書いてみよう!

続いて、応用として酸素の分子軌道を考えてみましょう!

一見難しそうですが、さっきのステップで考えていけば書くことが出来ます。

①・②縦軸をエネルギーとして、酸素原子のエネルギー準位図を書く

まず、左側に上向きの矢印を書き、上側を高エネルギー下側を低エネルギーとします。

続いて、O原子のエネルギー準位図を、真ん中に分子軌道を書くスペースを空けて、両側に書いていきます。

O原子の電子は8個です。

したがって、電子配置は1s2、2s2、2p4となり、『電子を軌道に入れるときの3ルール』に従って軌道に電子を入れると、上図のようになります。

③できる分子軌道を考える

続いて、できる分子軌道を考えていきます。

1s軌道同士からは、先の水素分子と同様にσ軌道σ*軌道が出来ます。

2sと2p軌道について、考えてみましょう(今回は2sと2p軌道同士の相互作用は無視します)

2s軌道は1s軌道と同様に、σ軌道σ*軌道が生成されます。

下図のようにpz軌道同士が重なるとσ軌道、px軌道とpy軌道同士が重なるとπ軌道が生成されます。

各酸素原子はp軌道を3本ずつ持っているので、酸素分子は3+3=6本の分子軌道が生成されることになります。

それぞれに結合性軌道と反結合性軌道があるので、よってp軌道からは、

σ2p、π2p×2、σ2p*、π2p*×2

が生成されると言えます。

ここで、エネルギーの順番がどのようになるか考えてみましょう!

σとπを比較すると、σ軌道の方が軌道の重なりが大きいです。

なので、σ軌道の方がより大きく軌道が分離します。

すなわち、結合性σ軌道はより安定化し、反結合性軌道σ軌道はより不安定化します。

したがって、σとπ軌道のエネルギー準位を考えると

σ2s2p2p* <σ2s*

の順番となります。

④・⑤分子軌道をエネルギー準位図に書き入れ、電子を入れる

続いて、③で考えた分子軌道をエネルギー準位図に書き入れていきます。

エネルギー準位の順番は③の通りなので、下図のような順番となります。

これらの軌道に電子を入れていけばよく、O2は電子の数が16個なのでそれらを構成原理・パウリの排他原理・フントの規則に従って入れればよいです。

よって、図のようにエネルギー準位図を書くことが出来ます。

ただし、今回は分かりやすいように上図のように書きましたが、正しい書き方はこれを少し改編する必要があります。

改編ポイントは、

・価電子の軌道のみエネルギー準位図に書く

・原子軌道の名前と分子軌道の名前の付け方は異なる

の2つです。

まず、1点目について、酸素の価電子は2s軌道と2p軌道の電子です。

よって、2s軌道と2p軌道のみをエネルギー準位図に書けばよく、1s軌道は省いて構いません。

これは、価電子のみが結合に関与するため、関与しない電子については書く必要がないからです。

『エネルギー準位図は価電子の軌道のみ書けばよい』と覚えておきましょう!

また、2点目について、分子軌道原子軌道では名前が異なります。

上の解説では分かりやすいように、分子軌道にもσ1sσ2pz等の原子軌道の名前を書き入れました。

しかし、分子軌道では“1σgのように書きます。

頭の数字については、σとπそれぞれ下から順番に1、2…と名前をつけていけばよいです。

問題はこの下付き文字ですが、g…geradeu…ungeradeと呼びます。

反転しても符号が同じならg、そうでないならuをつけるのですが、

σ軌道⇒結合性…g、反結合性…u

π軌道⇒結合性…u、反結合性…g

とつけると覚えておくのが実用上便利だと思います!

以上のことを踏まえてエネルギー準位図を書き直すと、下図のようになります。

これで酸素原子のエネルギー準位図は完成です!

⑥結合次数を考える

今回のO2の場合は、

結合性軌道の電子:1σgに2個、2σgに2個、1πuに4個で計8個

反結合性軌道の電子:1σuに2個、1πgに2個で計4個

より、$\frac{8-4}{2}=2$

となります。

O2は2重結合なので、実際に結合の数とも一致していますね!

Tips:窒素以前と酸素・フッ素でエネルギー準位図が異なる?

第2周期の等核二原子分子において、注意が必要なのは分子軌道のエネルギーの順番です。

具体的には、

N2以前:2σg > 1πu

O2・F2:2σg < 1πu

とエネルギーの順番が入れ替わります。

これは、2s軌道と2p軌道の相互作用が起きる、N2以前である場合、

σ2sσ2pzσ2s*σ2pz*が相互作用して更に分子軌道の安定化と不安定化が起こるからです。

すなわち、gと1σuが安定化し、2σgと2σuが不安定化します。

これによって、N2以前:2σg > 1πu となります。

O2では逆に2s軌道と2p軌道の相互作用がほとんど起こらないため、O2・F2:2σg < 1πuとなります。

O2やF2のように、周期表の右側で2s軌道と2p軌道の相互作用が起こりにくいのは、これらのエネルギーが離れているからです。

周期表の右側に行くにつれて、原子核の電荷(有効核電荷)が大きくなります。

なので、周期表の右側、すなわち有効核電荷の増加につれて、s軌道はエネルギーは大きく低下します。

一方、p軌道は遮蔽効果が大きくエネルギーの低下は小さいです。

したがって、周期表の右側ほどs軌道とp軌道のエネルギーの差は大きくなります。

この効果により、N2以前とO2・F2でエネルギー準位が異なることになります。

最後に

いかがでしたか?

今回は「エネルギー準位図はどうすれば書けるか」について解説してきました。

今回の内容をまとめると、

①縦軸をエネルギーにする

②真ん中にスペースを空けて置き、原子のエネルギー準位図を左右に書く

③できる分子軌道を考える

④分子軌道をエネルギー準位図に書き入れる

⑤電子を書き入れる

⑥結合次数を求めて、分子の安定性を判断する

6 Stepなります。

縮重の考え方はエネルギー準位図は院試でも重要になるので、ぜひおさえておきましょう!

ぜひ、参考にしてみてくださいね!

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この記事を書いた人

国立大学の化学科を首席で卒業!
現在はメーカー勤務の社会人です。
自身の経験を基に、勉強法や院試過去問解説などをしています!
詳しくはこちらのXから
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