皆さんは、
東大院試に向けて過去問を解いているけど、難しい!
過去問の解答が欲しい!
と思っていませんか?
この記事では、2025年度(令和7年度)入学 東大 応用化学科 応用化学専攻の物理化学の問題解答について、解説していきます!
問題(第1問)はこちら(東大ホームページ)からダウンロードできます。
大学院入試 | 東京大学 工学部 応用化学科|大学院 工学系研究科 応用化学専攻
ぜひ、問題を解いてから読んでみてください!
こちらの解答は正式なものではなく、筆者が出した解答ですのでその点には十分注意してお読みください!
Ⅰ.
1.
解答
(a) $ – S$
(b) $ – nR\left( {{x_B}\ln {x_B} + {x_T}\ln {x_T}} \right)$
(c) 0
解説
ギブズエネルギーの全微分$dG$を偏微分を用いて、
$dG = {\left( {\frac{{\partial G}}{{\partial p}}} \right)_{T,n,{x_B},{x_T}}}dp+ {\left( {\frac{{\partial G}}{{\partial T}}} \right)_{p,n,{x_B},{x_T}}}dT$
と表すことが出来ます。
したがって、$dG = Vdp – SdT$と比較することにより、
${\Delta _{mix}}S = – {\left( {\frac{{\partial \left( {{\Delta _{mix}}G} \right)}}{{\partial T}}} \right)_{p,n,{x_B},{x_T}}}$
$ = – nR\left( {{x_B}\ln \frac{{{p_B}}}{{{p_B}^*}} + {x_T}\ln \frac{{{p_T}}}{{{p_T}^*}}} \right)$
$ = – nR\left( {{x_B}\ln {x_B} + {x_T}\ln {x_T}} \right)$
となります。
また、ギブズエネルギーについて、
$\Delta G = \Delta H – T\Delta S$
が成り立つので、先の結果を踏まえると${\Delta _{mix}}H = 0$となります。
2.
解答
ベンゼン:トルエン$ = 1:3$
解説
与えられている条件より、
${p_B}^* = \frac{{{p_B}}}{{{x_B}}} = \frac{{4.8}}{{0.20}}$
${p_T}^* = \frac{{{p_T}}}{{{x_T}}} = \frac{{6.4}}{{0.80}}$
となります。${{p_B}}$と${{p_T}}$が等しい時のモル分率を${x_B}’$と${x_T}’$とすると、
${p_{B}}^*{x_B}’= {p_T}^*{x_T}’$より、
$\frac{{{x_T}’}}{{{x_B}’}} = \frac{{4.8}}{{0.20}} \times \frac{{0.80}}{{6.4}} = 3.0$
$\therefore \,\,{x_B}:{x_T} = 1:3$
したがって、ベンゼン:トルエン$ = 1:3$となります。
3.
解答
ベンゼンとトルエンは分子構造が類似しており、同種分子間力と異種分子間力が近似しているため。
解説
ラウールの法則があらゆるモル分率で成り立つような溶液のことを理想溶液と呼びます。
分子構造が類似しているような化合物を混合した溶液である場合、理想溶液となります。
逆に、分子構造が似ていない(=同種分子間力と異種分子間力が異なる)場合、ラウールの法則があらゆるモル分率で成立しません。
この理由は以下の通りです。
分子構造が類似していないAとBの溶液を考えます。
Aの純溶媒ではAの周囲は当然Aです。
しかし、Bのモル分率が増大していくにつれて、Aの周囲にBが存在するようになります。
分子間力:A-A >A-Bの場合、BはAを引き付ける力が弱いため、周囲がAだけの場合よりも蒸気圧が大きくなると予想できます。
一方で、分子間力A-A <A-Bの場合、BはAを引き付ける力が強いため、周囲がAだけの場合よりも蒸気圧が小さくなると予想できます。
つまり、このような同種分子間力と異種分子間力の違いにより、ラウールの法則からずれが生じることとなります。
したがって、同種分子間力と異種分子間力が等しいような類似構造をもつ混合物の時のみ、あらゆるモル分率でラウールの法則が成立します!
Ⅱ.
1.
解答
Aの生成速度は次のように表すことが出来る。
$\frac{{d[A]}}{{dt}} = – {k_1}[A]$
これを解くと、
$\int_{{{[A]}_0}}^{[A]} {\frac{{d[A]}}{{[A]}}} dt = – \int_0^t {{k_1}} dt$
$\therefore [A] = {[A]_0}{e^{ – {k_1}t}}$
となる。また、Bの生成速度は次のように表すことが出来る。
$\frac{{d[B]}}{{dt}} = {k_1}[A] – {k_2}[B]$
ここに先の結果を代入することにより、
$\frac{{d[B]}}{{dt}} = {k_1}{[A]_0}{e^{ – {k_1}t}} – {k_2}[B]$
となる。
解説
微分方程式を解く問題です。
Aの生成速度に関する微分方程式は解きやすく、それさえ解ければ問題文の式も導くことが出来ます!
2.
解答
定常状態近似より、
$\frac{{d[B]}}{{dt}} = {k_1}{[A]_0}{e^{ – {k_1}t}} – {k_2}[B] = 0$
$\therefore \,\,[B] = \frac{{{k_1}}}{{{k_2}}}{[A]_0}{e^{ – {k_1}t}}$
となる。ここで、Cの生成速度は先の結果も踏まえて、
$\frac{{d[C]}}{{dt}} = {k_2}[B] = {k_1}{[A]_0}{e^{ – {k_1}t}}$
と書ける。したがって、これを解くと、
$\int_0^t {d[C]} = {k_1}{[A]_0}\int_0^t {{e^{ – {k_1}t}}dT} $
$[C] = \left( {1 – {e^{ – {k_1}t}}} \right){[A]_0}$
となる。
解説
定常状態近似とは、
中間体Iの濃度が低く、一定の濃度であると仮定すること。すなわち、
$\frac{{d[I]}}{{dt}} \simeq 0$
と置くこと。
です。
要するに今回の問題の場合は、
$\frac{{d[B]}}{{dt}} = {k_1}{[A]_0}{e^{ – {k_1}t}} – {k_2}[B] = 0$
とすればよいです。
これを基に、問題文の式を導出しましょう!
3.(ⅰ)
解答
${t_{\max }} = \frac{1}{{{k_1} – {k_2}}}\ln \frac{{{k_1}}}{{{k_2}}}$
解説
与えられた式を微分して、
$\frac{{d[B]}}{{dt}} = \frac{{{k_1}}}{{{k_2} – {k_1}}}\left( { – {k_1}{e^{ – {k_1}t}} + {k_2}{e^{ – {k_2}t}}} \right){[A]_0}$
$t = {t_{\max }}$の時、$\frac{{d[B]}}{{dt}} = 0$となるので、
$ – {k_1}{e^{ – {k_1}{t_{\max }}}} + {k_2}{e^{ – {k_2}{t_{\max }}}} = 0$
$\ln {k_2} – {k_2}{t_{\max }} = \ln {k_1} – {k_1}{t_{\max }}$
${t_{\max }} = \frac{1}{{{k_1} – {k_2}}}\ln \frac{{{k_1}}}{{{k_2}}}$
となります。
3.(ⅱ)
解答
(c)
${t_{\max }}$は$({k_1},\,\log {k_1})$と$({k_2},\,\log {k_2})$を通る直線の傾きであるから、k2が大きくなるとその値は小さくなる。また、A→Bの速度は一定でB→Cの速度は速くなるので、Bの最大濃度は小さくなる。よって、(a)。
解説
(ⅰ)より、${t_{\max }} = \frac{{\log {k_1} – \log {k_2}}}{{{k_1} – {k_2}}}$です。
つまり、$({k_1},\,\log {k_1})$と$({k_2},\,\log {k_2})$の2点を通る直線の傾きが${t_{\max }}$となります。
$y = \log x$のグラフを考える or $y = \log x$を微分をしたら$\frac{1}{x}$となることから、
${k_2}$の値が大きくなると先の直線の傾きが小さくなることが分かります。
よって、元のグラフよりも${t_{\max }}$が小さい(a)か(b)が正解です。
続いて、定性的に考えましょう!
k1が一定ということはAがBになる速度は一定です。
一方で、k2が大きくなるということはBからCになる速度が速くなることを意味します。
以上のことから、Bの最大濃度は小さくなると予測できます。
したがって、(a)が正解となります!
最後に
いかがでしたか?
今回は、2025年度入学 東大院試 応用化学科 応用化学専攻の物理化学の問題について解説してきました。
今後も過去問の解説をどんどんしていきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね!


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