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[院試頻出]有機化合物の酸塩基の強弱の見分け方を徹底解説!

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酸・塩基の強弱を見分ける問題は院試で頻出です。

『有機化合物の酸・塩基の強弱ってどうやって見分ければいいの?

院試の酸・塩基の強弱を見分ける問題が分からない!

と思っているのではないでしょうか?

酸・塩基の強弱の問題を解くポイントは、

『電子密度』

これさえ押さえておけば、酸塩基の強弱を見分ける問題は解けるといっても過言ではありません。

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目次

電子密度の高さがポイント!

突然ですが、

アンモニアアニリンでは、どちらの塩基性が強いでしょうか?

少し考えてみてください。

いかがでしょう?

意外と悩みますよね。

解答としては、

アンモニアの方が強塩基です!

では、その理由について考えてみましょう。

ここで、酸塩基の定義について一度振り返ってみると、

酸:電子対を受け取る能力を有するもの

塩基:電子対を与える能力を有するもの

です。

これを言い換えると、

その原子における電子密度が高い(=電子対を与える能力が高い)ほど強塩基

ということができます!

では、これをアンモニアとアニリンに適用してみましょう!

アニリンでは、N上の孤立電子対が共鳴効果によってベンゼン環に引き付けられ、電子密度が低くなっています。

一方で、アンモニアではそういったことは起きていません。

したがって、アンモニアの方がよりN上の電子密度が高く、より強塩基であると結論付けることができます。

この考え方は非常に応用がききますので、ぜひ覚えておいてくださいね!

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混成軌道も大事!

続いて、次の問題を考えてみましょう。

ピリジンピペリジンはどちらの方が塩基性が高いでしょうか?

解答としては、ピペリジンの方がより強塩基となりますが、これを考える上で重要なのは混成軌道です。

まず、それぞれの混成軌道を考えてみると、

ピリジンのNはsp2混成軌道(二重結合)、ピペリジンのNはsp3混成軌道(単結合)

ですよね。

sp2とsp3ではs軌道の割合(=s性)が異なり、前者はs性が1/3(=33.3 %)で後者は1/4(=25.0 %)です。

つまり、sp2の方がs性が高いということができます! 

ここで、s軌道とp軌道について考えてみると、

s軌道における電子と正電荷の距離rsの方が、p軌道における電子と正電荷の距離rpよりも短い。

つまり、

となります。

よって、s軌道では電子がより求引されるので、s性が高い方が電子密度が小さいです。

したがって、ピリジンはピペリジンよりも電子密度が低く、ピペリジンがより強塩基であると結論付けることができます!

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水素結合を考慮する場合も

少し特殊な例を考えてみましょう!

こちらのように、4-ヒドロキシ安息香酸2-ヒドロキシ安息香酸では、どちらの方がより酸性度が高いでしょうか?

解答としては、2-ヒドロキシ安息香酸の方がより強酸です。

前提として、酸性度について比較する際は共役塩基を考えるとわかりやすいですね!

なぜなら、酸が強ければ強いほどその共役塩基は弱いからです!

つまり、強い酸を見分けるには弱い共役塩基を探せばよいということになります。

共役塩基とは『酸がプロトンを失うことで生じる化学種』のことで、今回の共役塩基はこちらに示す通りになります。

この2つの共役塩基を見て何か気づきましたか?

『あっ!』と何か気づけた方は素晴らしい!

ここでのポイントは水素結合です。

2-ヒドロキシ安息香酸アニオンはこちらのように分子内水素結合を起こします!

つまり、2-ヒドロキシ安息香酸アニオンのOはより電子密度が低いですから、4-ヒドロキシ安息香酸アニオンよりも塩基性が低いと言えます。

したがって、共役塩基が弱い方が強い酸であるということから、2-ヒドロキシ安息香酸の方がより強酸と結論付けることができます!

『電子密度の高さ』『その化合物の安定性』と捉えても大丈夫です!

局所的な電子密度が高い=安定性が低い=塩基性が高い

が成り立ちます(非局在化とかはまさに分かりやすいですよね)。

例えば、2-ヒドロキシ安息香酸アニオンは水素結合があるのでより安定性が高いです。

したがって、2-ヒドロキシ安息香酸はより強い酸であると解答できます。

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練習問題

最後にここまでに学んだことを活かして、いくつか練習問題を解いてみましょう!

① 2-フルオロ酢酸と2-クロロ酢酸のうち、より酸性度が高いのはいずれか

② フェノールとチオフェノールのうちより、酸性度が高いのはいずれか

➂ アンモニアとトリエチルアミンのうちより、塩基性度が高いのはいずれか

④ 1,3-シクロペンタジエンと1,3,5-シクロヘプタトリエンのうち、より酸性度が高いのはいずれか

解答

① 2-フルオロ酢酸

共役塩基を考える。

FはClよりも電気陰性度が高いため、Fの方が電子求引性が高い。

したがって、2-フルオロ酢酸アニオンは弱い共役塩基であるため、2-フルオロ酢酸はより酸性度が高い。

②チオフェノール

共役塩基を考える。

今回の問題のように、異なる大きさの原子に水素が結合している場合(-OHと-SH)は注意が必要。

この時は、原子の大きさが電気陰性度より優先される。

S とO を考えると、前者の方が大きいため負電荷がより大きな空間に広がっている(=局所的な電子密度が低い)。

局所的な電子密度が低い=安定性が高い

したがって、S つまりチオフェノールアニオンの方がフェノールアニオンよりも安定性が高い(=共役塩基が弱い)ため、チオフェノールの方が酸性度が高い。

➂トリエチルアミン

アルキル基は一般に電子供与性基として振るまう(=超共役)。

したがって、トリエチルアミン上のNはより電子密度が高いため、トリエチルアミンの方がより塩基性度が高い。

④1,3-シクロペンタジエン

共役塩基を考える。

芳香族性について考えてみると、1,3-シクロペンタジエンはπ電子が6個で芳香族化合物である。

一方で、1,3,5-シクロヘプタトリエンはπ電子が8個で反芳香族化合物である。

したがって、1,3-シクロペンタジエンアニオンは安定性が高く、弱い強塩基であるから、1,3-シクロペンタジエンの方が酸性度が高い。

Huckel則

π電子の数が、

4n+2個…芳香族化合物

4n個…反芳香族性化合物 (nは整数)

が成り立ちます。

最後に

いかがでしたか?

今回は、酸・塩基の強弱をいかに見分けるかについて解説してきました。

教科書でもよくまとまっている酸・塩基のポイントをまとめると以下のようになります!

①周期表の下方ほど酸性度が高い

②周期表の右側ほど酸性度が高い

➂混成状態で酸性度が変化

④電子求引で酸性度が変化

ですが、今までやったように『電子密度の高さ』もしくは『その化合物の安定性』という観点で考えると、解きやすいと思いますよ!

ぜひ、参考にしてみてくださいね!

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この記事を書いた人

国立大学の化学科を首席で卒業!
現在は大学院で有機化学を専攻中です。
自身の経験を基に、勉強法や院試過去問解説などをしています!
詳しくはこちらのXから
https://x.com/percussion_lab

コメント

コメント一覧 (4件)

  • 期末に出題される予定なのですが、全然わからなかったのでありがたいです。
    ブックマークさせていただきます。

    • ベンゼン様

      コメントいただき、ありがとうございます。
      有機化合物の酸・塩基を見分ける力は研究室に入ってからも役立つと思うので、ぜひ勉強、期末頑張ってください!
      今後も当ブログをよろしくお願いします。

    • ベンゼン 様
      コメントいただき、ありがとうございます。

      期末テスト、お疲れさまでした!
      テスト対策のお役に立てたのであれば幸いです。
      今後も当ブログをよろしくお願いいたします。

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