[有機化学]2024東京科学大(旧東工大)材料系院試の過去問解答を無料公開!

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皆さんは、

東京科学大院試に向けて過去問を解いているけど、難しい!

過去問の解答が欲しい!

と思っていませんか?

この記事では、2024年入学東京科学大の物質理工学院材料系の有機化学の問題解答について、解説していきます!

問題(Ⅰ-4)はこちら(ホームページ)からダウンロードできます。

過去の入試問題 | Science Tokyo 受験生

ぜひ、問題を解いてから読んでみてください!

こちらの解答は正式なものではなく、筆者が出した解答ですのでその点には十分注意してお読みください!

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目次

Ⅰ-4(1)

(a) E1
(b) SN2

解説

まず、生成物より(a)は脱離反応、(b)は求核置換反応であることが分かります。

また、置換反応S脱離反応Eなので、(a)はE1 or E2、(b)はSN1 or SN2です。

ここで、重要なのがカルボカチオンの安定性です。

アルキルカチオンでは、安定性が第3級 >第2級>第1級となります。

つまり、(a)について第3級カルボカチオンは安定性が高いため、H2Oが脱離してカルボカチオンが生成します。

したがって、(a)はE1脱離反応です。

一方で、(b)は第一級ハロゲン化アルキルであり、カルボカチオンは不安定であるため、SN2となります。

(a)と(b)の反応機構は以下の通りです。

(a) k[2-メチル-2-プロパノール]
(b) k[1-ブロモプロパン][ナトリウムエトキシド]

解説

E1やSN2の数字は、

律速段階の遷移状態に関与する分子の数

を表しています。

つまり、E1の速さはアルコール単分子、SN2の速さはハロゲン化アルキルと求核剤の2分子の濃度で決まるということです。

したがって、

(a) k[2-メチル-2-プロパノール]

(b) k[1-ブロモプロパン][ナトリウムエトキシド]

となります。

補足として、E1は二段階の反応、SN2は一段階の反応です。

紛らわしいので、間違えないようにしましょう!

初めにアルコールが硫酸からプロトンを受け取ってオキソニウムカチオンが生成し、この過程はエネルギー障壁が小さい。続いて起こる水の脱離はエネルギー障壁が比較的大きく、他の中性の化学種と比較して不安定なカルボカチオンが生成する。このカチオンからプロトンが脱離し安定なアルケンとなる。

解説

フリーハンドで図を書くので必ずしも全く同じ図である必要はありませんが、ポイントをおさえて書くことが重要です。

この解答のポイントは、

① 1つ目のプロトンの授受はエネルギー障壁が小さい

②カチオンの生成はC-O切断なのでエネルギー障壁が大きい

③カルボカチオンは中性の他の化学種と比較してエネルギーが高い

が考えられます。

ぜひ、自分の書いた解答を見てみて、このポイントをおさえられているか見てみてください!

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Ⅰ-4(2)

解説

アルキンの酸化の問題です。

アルケンの酸化開裂は有名ですが、アルキンとなると『?』となる方が多いのではないでしょうか?

アルキンとKMnO4を反応させると、下記のように反応してα-ジケトン生成します。

アルケンでも反応機構は同様に5員環が生成するので、アルキンの酸化反応機構を知らなくても推測することが出来ます。

ただし、このようにKMnO4とアルキンを反応させると、α-ジケトンが生成しますが、塩基性条件下という指定があるとカルボン酸へと酸化開裂します。

正直、解答としてどちらの生成物を書くか悩むところですが…

問題文は『KMnO4としか特に指定がないため、α-ジケトンとして書くのが良いのかなと考えました。

アルキンと2当量のハロゲン化水素の反応です。

この反応では、ジェミナルジハロゲン化物(1つの炭素原子上に2つのハロゲンが結合している)が生成します。

反応機構は以下の通り。

アルキンにまず1当量のHClが反応するとき、π錯体が生成します。

今回の反応物である3-ヘキシンは対称性があるので、ここで位置選択性は考える必要がありません。

続いて、2当量目のHClが反応します。

この時、塩素原子側の炭素原子にカルボカチオンができると、塩素原子がカルボカチオンと電子共有するので安定化します。

したがって、ジェミナルジハロゲン化物となります!

ちなみに問題文の酢酸が気になるところですが、おそらく極性溶媒であることを示しています。

こちらのサイトに記載がありますが、アルキンへの付加は「イオン反応」「ラジカル反応」があり、条件によって反応と生成物が変化します。

臭化水素を用いた臭素化反応(アルケンへの付加、アルキンへの付加):臭化水素③:臭素化・ヨウ素化反応解説シリーズ 36 – Chemia

極性溶媒の場合はイオン反応となるので、ジェミナルジハロゲン化物が生成物です。

アルキンへの水の付加反応です。

水銀(ⅱ)イオンを触媒として反応が進行します。

反応機構は以下の通り。

最後はエノールが生成し、酸触媒反応によってエノールからケトンへと互変異します。

よって、今回の反応では3-ヘキサノンが生成物となります。

これはLiを用いたアルキンへの水素化反応で、「溶解金属還元」と呼ばれています。

Liは二重結合よりも三重結合により早く反応するので、アルケンで反応が止まります。

反応機構は以下の通り。

この反応では、トランス体ができることに注意が必要です。

反応機構において、ラジカルアニオンが生じますがシス体は立体ひずみが生じるため、比較的不安定となります。

したがって、トランス体が生成物です。

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Ⅰ-4(3)

(a) 〇
(b) ×
(c) 〇
(d) 〇
(e) ×

解説

(a)

ゼーマン効果とは、

『原子を磁場中に置くとスペクトルが分裂する現象』

のことを指します。

図を使って説明すると、

外部磁場がない場合、図のように核磁気モーメントは無秩序に配向しています。

しかし、そこに外部磁場を与えると、外部磁場と同方向で安定なαスピンと逆方向で不安定なβスピンに分裂します。

これがいわゆる『ゼーマン効果』です。

NMRはこのαスピンとβスピンのエネルギー差に相当する波を照射することで、スペクトルを得ています。

次に、ピークの分裂を考えましょう!

例として、CH3CHCl2メチルプロトンのシグナルを考えます。

メチル基の隣にはメチン基が隣接しており、メチン基のプロトンはゼーマン効果によりαβに分裂します。

この隣のメチン基が及ぼす外部磁場の絶対値をB0とすると、

メチン基がαスピンの場合、外部磁場はB0+B0

メチン基がβスピンの場合、外部磁場はB0-B0

となります。

つまり、メチン基のスピンの向きにより、メチルプロトンのシグナルは2つに分裂します。

以上のことをまとめると、

ピークの分裂はゼーマン効果によって起きるということが出来ます。

与えられている図を見ると、B3のピークは3つに分裂しています。

したがって、この記述は正しいです。

(b)

メチル基のプロトンはおおよそ0~1.5 ppm付近、ベンゼン環のプロトンはおおよそ6.5~8.0 ppm付近です。

したがって、A1のピークはベンゼン環上のプロトン由来、A2のピークはメチル基由来であり、記述となので、×となります。

(c)

1置換体の場合、ベンゼン環上のプロトンはオルト,メタ,パラの3種類なので、ピークは3本で生成物Bと合致します。

生成物Aはベンゼン環上のプロトンが1種類であり、このことから多置換体であると予測できます。

したがって、ベンゼン環上の置換基の数はAの方がBよりも多いと考えられるので、この記述は正しいです。

(d)

ピーク面積はプロトンの数と一致します。

メチル基由来のプロトンは9個(=B4のピーク面積)であり、ベンゼン環上のプロトンの数5個(=B1,B2,B3のピーク面積の合計)よりも多いです。

したがって、この記述はとなります。

(e)

カップリングの効果はピークの分裂が起こるなどで、ピークの鋭さや強度には影響しません。

したがって、この記述は×です。

解説

①で述べたように、Aは多置換体Bは一置換体であると考えられます。

Aについて、置換基がtert-Bu基であり、アルキル基はo,p配向性かつ置換基が嵩高いことから、p置換体となると予想できます。

実際に、AのNMRスペクトルを考えるとAは対称性があり、ベンゼン上のプロトンは1種類、メチル基のプロトンも1種類であり、図と一致します。

したがって、A、Bの化合物は解答の通りです。

ちなみに、今回のようにAのような多置換体が主生成物となる理由は、

アルキル基のような電子供与基が導入されると、電子が豊富となることで求電子置換反応が起こりやすくなるからです!

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最後に

いかがでしたか?

今回は、2024年度東京科学大(東工大)院試の材料系の有機化学の問題について解説してきました。

今後も過去問の解説をどんどんしていきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね!

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この記事を書いた人

国立大学の化学科を首席で卒業!
現在はメーカー勤務の社会人です。
自身の経験を基に、勉強法や院試過去問解説などをしています!
詳しくはこちらのXから
https://x.com/percussion_lab

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