突然ですが、
アトキンス物理化学の解答・解説を知りたい!
演習問題の解答がどのようになるのか確かめたい!
と思っていませんか?
アトキンス物理化学は演習問題が沢山ありますが、解答書にも解答が記載されていない問題が沢山あるんですよね。
そこで、解答書には記載されていない演習問題の解説をしてみました!
この記事では、アトキンス物理化学(上)第10版2章A,B 演習問題(b)の解答・解説をしていきます!
解答はアトキンス物理化学の解答書にも記載されていないので、これは筆者が求めた解答になります。計算ミスがあるかもしれないので、その点には注意してください!(計算ミスがあればご指摘いただければ幸いです。)
2章A
2A・1(b)
等分配則を用いる上で重要なのが、自由度の数です。
自由度は、
並進自由度・回転自由度・振動自由度
の3つに分けることが出来、
並進自由度は常に3 (x, y, z)
回転自由度${{\nu ^*}_R}$は直線分子で2、非直線分子で3
振動自由度${{\nu ^*}_V}$は$N$原子分子として、直線分子では$3N – 5$、非直線分子では$3N – 6$
です。
この時、気体の熱容量は、
${C_{v,m}} = \frac{1}{2}\left( {3 +{{\nu ^*}_R}{ + 2{\nu ^*}_V}} \right)$
となります。
ここで、等分配則が成立するのは、振動モードの波数を${\tilde \nu }$とした時、
特性温度${\theta ^V} = \frac{{hc\tilde \nu }}{k} < < T$
の時です。すなわち、今回のような25 ℃(298 K)の時、
$\tilde \nu < < \frac{{kT}}{{hc}}$≒$207\,c{m^{ – 1}}$となりますが、基本的に振動モードの波数は$207\,c{m^{ – 1}}$より大きいので、${{\nu ^*}_V}=0$となります(後で補足)。
(ⅰ)~(ⅲ)
O3、C2H6、SO2はいずれも非直線分子なので、回転自由度は3である。
したがって、
${C_{v,m}} = \frac{1}{2}(3 + 3)R = 3R$
$E = 3RT = 3 \times 8.3145 \times 298.15$
≒$7.4\,36\,kJ\,mo{l^{ – 1}}$
振動自由度について
等分配則を成立させるには、上記の通りです。しかし、アトキンス(a)の解答では、例えばC6H6の振動自由度を4としています。
C6H6の振動モードの波数は低波数から、
$\tilde \nu = 417.30,\,\,417.32,\,\,627.09,\,\,627.37,\,699.81 \cdots \,c{m^{ – 1}}$
であり、仮にここではこれに従って$650\,c{m^{ – 1}}$より低波数程度なら許容と考えてみましょう。
そうすると、
O3:$705,\,1042,\,1110\,c{m^{ – 1}}$より${{\nu ^*}_V}=0$
C2H6:$289,\,822,\,995 \cdots \,c{m^{ – 1}}$より${{\nu ^*}_V}=1$
SO2:$518,\,1151,\,1362\,c{m^{ – 1}}$より${{\nu ^*}_V}=1$
です。したがって、C2H6とSO2は、
$E = 4RT = 4 \times 8.3145 \times 298.15$
≒$9.916\,kJ\,mo{l^{ – 1}}$
となります。
おそらく、教科書の解答としては実験値に合うように波数を選択しているのですが、個人的にはあまり納得いかないところです…。
「等分配則から導かれる理論値と実験値は異なり、等分配則を用いるには適していない分子だ」
と結論づける方が最適な気がします。
2A・2(b)
状態関数とは、
「その値が系の現在の状態だけに依存し、反応経路には無関係な物理量」
であることを念頭に解きましょう!
(ⅰ)体積、(ⅲ)内部エネルギー、(ⅳ)密度はその状態のみで決まるので、いずれも状態関数である。
一方で、(ⅱ)熱は状態関数ではなく、経路に依存するので経路関数と呼ばれます。
仕事はなんとなく経路関数であるとわかると思います。
熱力学第一法則$\Delta U = q + w$より、内部エネルギーが状態関数で仕事が経路関数なので、熱も経路関数であると考えることが出来ます。
2A・3(b)
系がした仕事$w$は、
$w = – {p_{ex}}\Delta V$
で計算できることを用いましょう!
$\Delta V = 75.0\, \times 25.0 \times {10^{ – 6}}\,{m^3}$
よって、
$w = – {p_{ex}}\Delta V = – 150 \times {10^3} \times 75.0 \times 25.0 \times {10^{ – 6}}\,J$
≒$ – 281\,J$
となる。
2A・4(b)
等温過程において、$\Delta U = 0$です。
よって、仕事$w$を求めて熱力学第1法則より熱$q$を求めることを考えましょう!
題意より、いずれも等温過程であるから、
$\Delta U=0$
となる。
(ⅰ)
可逆過程なので、
$dw = – {p_{ex}}dV = – pdV$
$\therefore \,\,w = – \int_{{V_i}}^{{V_f}} {pdV = – nRT\int_{{V_i}}^{{V_f}} {\frac{{dV}}{V} = – nRT\ln \frac{{{V_f}}}{{{V_i}}}} } $
$ = – 2.00\,mol \times 8.314\,J\,{K^{ – 1}}\,mo{l^{ – 1}} \times 273.15\,K \times \ln \frac{{20.0}}{{5.0}}$
≒$ – 6.30\,kJ$
である。また、熱力学第1法則より、
$q = \Delta U – w$
≒$6.30\,kJ$
となる。
(ⅱ)
気体の最終圧力${p_f}$と外圧が等しいので、理想気体の状態方程式より、
${p_f} = {p_{ex}} = \frac{{nRT}}{{{V_f}}} = \frac{{2.00\,mol \times 0.08206\,d{m^3}\,atm\,{K^{ – 1}}\,mo{l^{ – 1}} \times 273.15\,K}}{{20.0\,d{m^3}}}$
≒$2.241\,atm$
である。よって、
$w = – {p_{ex}}\Delta V = – 2.241\,atm \times \frac{{1.013 \times {{10}^5}\,Pa}}{{1\,atm}} \times 15.0 \times {10^{ – 3}}\,{m^3}$
≒$ – 3.405\,kJ$=$ – 3.40\,kJ$
であり、熱力学第1法則より、
$q = \Delta U – w$≒$3.40\,kJ$
となる。
(ⅲ)
自由に膨張するので、$w = 0\,J$である。よって、熱力学第1法則より、
$q = \Delta U – w $=$ 0\,J$
となる。
2A・5(b)
理想気体の状態方程式より、
$\frac{p}{T} = const.$
が成り立ちます。これより、最終の圧力を求めましょう。
また、$\Delta U = n{C_{v,m}}\Delta T$により、$q = \Delta U – w$(熱力学第1法則)より求めることが出来ます!
理想気体の状態方程式より、$\frac{p}{T} = const.$が成り立つ。
よって、最終の圧力は、
${p_f} = {T_f} \times \frac{{{p_i}}}{{{T_i}}} = 356 \times \frac{{111}}{{277}}$
≒$142.6\,kPa$≒$143\,kPa$
である。
また、
$\Delta U = n{C_{v,m}}\Delta T = 2.00 \times \frac{5}{2} \times 8.314 \times \left( {356 – 277} \right)$
≒$3.284\,kJ$≒$3.28\,kJ$
となる。加えて、定積変化より$w = 0$であるから、熱力学第1法則より、
$q = \Delta U – w$≒$3.28\,kJ$
となる。
2A・6(b)
(ⅰ)は$w = – {p_{ex}}\Delta V$より、(ⅱ)は$w = – \int_{{V_i}}^{{V_f}} pdV$より求めましょう!
ⅰ)
$w = – {p_{ex}}\Delta V = – 7.7 \times {10^3}Pa \times 2.5 \times {10^{ – 3}}\,{m^3}$
=$ – 19.25\,J\,$≒$ – 19\,J$
ⅱ)
$w = – \int_{{V_i}}^{{V_f}} {pdV = – nRT\int_{{V_i}}^{{V_f}} {\frac{{dV}}{V} = – nRT\ln \frac{{{V_f}}}{{{V_i}}} = – \frac{{6.56}}{{39.95}} \times 8.314 \times 305\ln \frac{{21.0}}{{18.5}}} } $
≒$ – 52.8\,$≒$ – 53\,kJ$
となる。
2章B
2B・1(b)
定圧熱容量の定義は、
${C_p} = {\left( {\frac{{\partial H}}{{\partial T}}} \right)_p}$
です。定圧条件下において、
$\Delta H = {q_p} = {C_p}\Delta T$
が成立すること、また完全気体において、
${C_{p,m}} – {C_{v,m}} = R$
が成立することを用いましょう!
$\Delta H = {q_p} = {C_p}\Delta T$より、
$\,{C_{p,m}} = \frac{{{q_p}}}{{n\Delta T}} = \frac{{178\,J}}{{1.9\,mol \times 1.78\,K}}$
≒$52.6\,J\,{K^{ – 1}}\,mo{l^{ – 1}}$
となる。
また、${C_{p,m}} – {C_{v,m}} = R$が成り立つことから、
${C_{v,m}} = {C_{p,m}} – R = 52.63 – 8.31$
≒$44.3\,J\,{K^{ – 1}}\,mo{l^{ – 1}}$
となる。
2B・2(b)
定圧条件において
$dH = {C_p}dT$
が成り立つので、それを積分して$\Delta H$を求めましょう!
また、理想気体の場合は内部エネルギーとエンタルピーが温度のみに依存する関数であるというのがポイントとなります。
今回の問題では物質量の指定がないので、$1\,mol$の場合を考えるとよいです。
気体の物質量が$1\,mol$であるとする。
(ⅰ)
定圧条件において
$dH = {C_p}dT$
が成り立つので、
$\Delta H = \int_{298.15}^{373.15} {\left( {20.17 + 0.4001T} \right)dT} $
$ = \left[ {20.17T + \frac{{0.4001}}{2}{T^2}} \right]_{298.15}^{373.15}$
$ = 20.17\left( {373.15 – 298.15} \right) + \frac{{0.4001}}{2}\left( {{{373.15}^2} – {{298.15}^2}} \right)$
≒$11.58\,kJ$
定圧条件において、
$q = \,\Delta H$≒$11.58\,kJ$
である。また、$w = – {p_{ex}}\Delta V$より、
$w = – {p_{ex}}\Delta V = – p\Delta V = – \Delta (pV) = – \Delta (nRT) = – nR\Delta T$
$ = – 1.00\,mol \times 8.3145\,J\,{K^{ – 1}}\,mo{l^{ – 1}} \times 75.00\,K$
≒$ = 624\,J$
であり、熱力学第1法則より、
$\Delta U = q + w = 11.58 + 0.624$
≒$12.2\,kJ$
となる。
(ⅱ)
理想気体の場合、内部エネルギーとエンタルピーが温度のみに依存する関数であるので、
$\Delta H$≒$11.58\,kJ$
$\Delta U$≒$12.2\,kJ$
であり、定積変化であるから$w = 0$である。したがって、熱力学第1法則より、
$q = \Delta U – w$
≒$12.2\,kJ$
となる。
2B・3(b)
定圧条件において、
$\Delta H = q = {C_p}\Delta T$
が成り立つこと及びエンタルピーの定義である
$\Delta H = \Delta U + \Delta (pV)$
を用いましょう!
定圧条件より、
$\Delta H = q = {C_p}\Delta T = n{C_{p,m}}\Delta T = 2.0 \times 37.11 \times 27$
≒$2.0\,kJ$
となる。また、エンタルピーの定義より、
$\Delta H = \Delta U + \Delta (pV)$
$p = \frac{{RT}}{{{V_m} – b}} – \frac{a}{{{V_m}^2}}$
$\therefore \,\,\Delta U = \Delta H – nR\Delta T = 2.00 – 2.0 \times 8.314 \times 27 \times {10^{ – 3}}$
≒$1.6\,kJ$
となる。
最後に
いかがでしたか?
今回は、アトキンス物理化学(上)第10版の1章B演習問題の解答及び解説をしてきました。
演習問題を沢山解いてテストや院試で高得点を目指しましょう!
もし、この記事の人気があれば他の演習問題の解説・解答に関する記事も増やしていきたいと考えています!
ぜひ、参考にしてみてくださいね!
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