突然ですが、
アトキンス物理化学の解答・解説を知りたい!
演習問題の解答がどのようになるのか確かめたい!
と思っていませんか?
アトキンス物理化学は演習問題が沢山ありますが、解答書にも解答が記載されていない問題が沢山あるんですよね。
そこで、解答書には記載されていない演習問題の解説をしてみました!
この記事では、アトキンス物理化学(上)第10版2章D・E演習問題(b)の解答・解説をしていきます!
解答はアトキンス物理化学の解答書にも記載されていないので、これは筆者が求めた解答になります。計算ミスがあるかもしれないので、その点には注意してください!(計算ミスがあればご指摘いただければ幸いです。)

2章D
2D・1(b)
内圧${\pi _T}$は、ファンデルワールス状態方程式の第2項である
${\pi _T} = \frac{a}{{{V_m}^2}}$に相当します。
(この項は実在気体分子の相互作用を考慮した項であり、内圧は分子間相互作用により生じるからです。)
この式を用いて解答をしましょう!
内圧${\pi _T}$は気体のモル体積${{V_m}^2}$とファンデルワールス定数$a$を用いて下記のように記述することが出来る。
${\pi _T} = \frac{a}{{{V_m}^2}}$
問題文より、気体のモル体積は完全気体とみなして求めることにより、
${V_m} = \frac{{RT}}{p} = \frac{{0.08206\,d{m^3}\,atm\,{K^{ – 1}}\,mo{l^{ – 1}} \times 298\,K}}{{1.00\,bar \times \frac{{1.000\,atm}}{{1.013\,bar}}}} = 24.77\,d{m^3}\,mo{l^{ – 1}}$
となる。よって、内圧は、
${\pi _T} = \frac{a}{{{V_m}^2}} = \frac{{6.775\,atm\,d{m^6}\,mo{l^{ – 2}}}}{{{{24.77}^2}\,d{m^6}\,mo{l^{ – 2}}}}$
≒$1.10 \times {10^{ – 2}}\,atm$
となる。
2D・2(b)
内部エネルギーは体積と温度の関数なので、
$dU = {\left( {\frac{{\partial U}}{{\partial V}}} \right)_T}dV + {\left( {\frac{{\partial U}}{{\partial T}}} \right)_V}dT$
$= {\pi _T}dV + {C_V}dT$
と書けます。ここで、今回の問題は等温膨張なので、
$dU = {\pi _T}dV$
となります。
内部エネルギー変化量は、等温膨張過程であることを考慮して、
$dU = {\pi _T}dV$
と書ける。
よって、
$\Delta {U_m} = \int_{1.00}^{30.0} {\frac{a}{{{V_m}^2}}dV}$
$= – a\left[ {\frac{1}{{{V_m}}}} \right]_{1.00}^{30.0} = – \frac{a}{{30.0}} + a = \frac{{29.0}}{{30.0}}a$
$= \frac{{29.0}}{{30.0}}\,mol\,d{m^{ – 3}} \times 1.337\,atm\,d{m^6}\,mo{l^{ – 2}} \times \frac{{1.013 \times {{10}^5}\,Pa}}{{1.00\,atm}} \times \frac{{{m^3}}}{{{{10}^3}\,d{m^3}}}$
≒$131\,J\,mo{l^{ – 1}}$
である。また、
$w = – \int {pd{V_m}}$
$= – \int {\left( {\frac{{RT}}{{{V_m} – b}} – \frac{{{a^2}}}{{{V_m}^2}}} \right)d{V_m}} $
$= – \int {\left( {\frac{{RT}}{{{V_m} – b}}} \right)} d{V_m} – \int {\frac{{{a^2}}}{{{V_m}^2}}} d{V_m}$
$= – q + \Delta {U_m}$(熱力学第一法則)
であるので、
$q = \int_1^{30} {\left( {\frac{{RT}}{{{V_m} – b}}} \right)} d{V_m}$
$= RT\left[ {\ln \left( {{V_m} – b} \right)} \right]_1^{30}$
$= 8.314\,J\,mo{l^{ – 1}} \times 298\,K \times \ln \left( {\frac{{30.00 – 3.20 \times {{10}^{ – 2}}}}{{1.00 – 3.20 \times {{10}^{ – 2}}}}} \right)$
≒$8.50kJ\,mo{l^{ – 1}}$
となる。したがって、熱力学第一法則より、
$w = – q + \Delta {U_m} = – 8.505 \times {10^3} + 130.9$
≒$- 8.37\,kJ\,mo{l^{ – 1}}$
となる。
2D・3(b)
膨張率$\alpha = \frac{1}{V}{\left( {\frac{{\partial V}}{{\partial T}}} \right)_p}$
と書けるので、体積Vを温度Tで微分して膨張率を求めましょう。
まず、与えられたVの式をTで微分することにより、
${\left( {\frac{{\partial V}}{{\partial T}}} \right)_p} = V’\left( {3.7 \times {{10}^{ – 4}} + 3.04 \times {{10}^{ – 6}}T} \right)$
となり、310℃において、
${\left( {\frac{{\partial V}}{{\partial T}}} \right)_{p,310}}= {V_{298}}\left( {3.7 \times {{10}^{ – 4}} + 3.04 \times {{10}^{ – 6}} \times 310} \right)$
≒$ 1.31 \times {10^{ – 3}}\,{V_{298}}\,{K^{ – 1}}$
となる。また、
${V_{310}} = {V_{298}}\left( {0.77 + 3.7 \times {{10}^{ – 4}} \times 310 + 1.52 \times {{10}^{ – 6}} \times {{310}^2}} \right)$
≒$1.03{V_{298}}$
が成り立つ。したがって、膨張率の式に代入して、
$\alpha = \frac{1}{V}{\left( {\frac{{\partial V}}{{\partial T}}} \right)_p}$
$= \frac{1}{{1.03{V_{298}}}} \times 1.31 \times {10^{ – 3}}{V_{298}}$
≒$1.27 \times {10^{ – 3}}{K^{ – 1}}$
となる。
2D・4(b)
「密度を0.10パーセント増加させる」を式に言い換えることが必要です。
つまり、式に直すと$\frac{{d\rho }}{\rho } = 0.10 \times {10^{ – 2}}$
となります。この式と圧力の関係を導きましょう!
等温圧縮率は、
${\kappa _T} = – \frac{1}{V}{\left( {\frac{{\partial V}}{{\partial p}}} \right)_T}$
と書くことが出来るので、等温において、
$\frac{{dV}}{V} = – {\kappa _T}dp$
となる。また、体積は質量と密度を用いて、
$V = \frac{m}{\rho }$
と書けるので、両辺微分して、
$dV = – \frac{m}{{{\rho ^2}}}d\rho$
$= – \frac{V}{\rho }d\rho$
となる。したがって、
$\frac{{dV}}{V} = – \frac{{d\rho }}{\rho } = – {\kappa _T}dp$
が成り立つ。以上より、
$\frac{{d\rho }}{\rho } = 0.10 \times {10^{ – 2}} = {\kappa _T}dp$
$\therefore dp = \frac{{0.10 \times {{10}^{ – 2}}}}{{{\kappa _T}}} = \frac{{0.10 \times {{10}^{ – 2}}}}{{2.21 \times {{10}^{ – 6}}}}$
≒$4.5 \times {10^2}\,atm$
となる。
2D・5(b)
等温ジュール-トムソン係数${\mu _T}$とジュールトムソン係数$\mu$の関係は、
${\mu _T} = – {C_p}\mu$
となります。また、ジュールトムソン係数の定義は、
$\mu = {\left( {\frac{{\partial {H_m}}}{{\partial p}}} \right)_T}$
なので、これらを用いて解答しましょう!
ジュールトムソン係数は、
${\mu _T} = – {C_p}\mu$
$ = – 37.11 \times 1.11$
≒$- 41.2J\,at{m^{ – 1}}\,mo{l^{ – 1}}$
となる。また、エンタルピーについて以下の式が成り立つ。
$dH = n{\left( {\frac{{\partial {H_m}}}{{\partial p}}} \right)_T}dp$
$= n{\mu _T}dp$
したがって、供給すべき熱エネルギーは、
$q = \Delta H = 10.0 \times ( – 41.19) \times ( – 75)$
≒$31\,kJ$
となる。
2章E
2E・1(b)
等分配則を用いる上で重要なのが、自由度の数です。
自由度は、
並進自由度・回転自由度・振動自由度
の3つに分けることが出来、
並進自由度は常に3 (x, y, z)
回転自由度${{\nu ^*}_R}$は直線分子で2、非直線分子で3
振動自由度${{\nu ^*}_V}$は$N$原子分子として、直線分子では$3N – 5$、非直線分子では$3N – 6$
です。
この時、気体の熱容量は、
${C_{v,m}} = \frac{1}{2}\left( {3 +{{\nu ^*}_R}{ + 2{\nu ^*}_V}} \right)R$
となります。
CO2の自由度に関して、
並進自由度:3
回転自由度:2 (直線分子)
振動自由度:$3\times3-5=4$
である。したがって、振動の自由度を考慮しなかったときのモル定容熱容量とモル定圧熱容量は、
$C_{v,m}=\dfrac{1}{2}\left(3+2\right)R=\dfrac{5}{2}R$
$C_{p,m}=\dfrac{5}{2}R+R=\dfrac{7}{2}R$
この時の比熱比は、
$\gamma=\dfrac{7}{5}=1.40$
である。一方で、振動の自由度を考慮した時は、
$C_{v,m}=\dfrac{1}{2}\left(3+2+2\times4\right)R=\dfrac{13}{2}R$
$C_{p,m}=\dfrac{13}{2}R+R=\dfrac{15}{2}R$
より、比熱比は、
$\gamma=\dfrac{15}{13}=1.15$
となる。
CO2の比熱比(25℃)の値は1.29(Wikiより)であるので、振動の自由度を考慮しない場合の方が近くなる。
2E・2(b)
等温条件下において、
${\Delta _r}{H^ \circ } = {\Delta _r}{U^ \circ } + \Delta {n_g}RT$
が成り立ちます。
ここで、$\Delta {n_g}$は反応における気体分子の物質量の変化です。
断熱可逆膨張において、以下の式が成り立つ。
$T_{f}=T_{i}\left( \dfrac{V_{f}}{V_{i}}\right) ^{\dfrac{1}{c}}$
ここで、
$c=\dfrac{C_{v,m}}{R}=\dfrac{C_{p,m}-R}{R}$
である。
$c=\dfrac{C_{v,m}}{R}=\dfrac{C_{p,m}-R}{R}=\dfrac{37.11-8.3145}{8.3145}=3.463$
より、
$T_{f}=T_{i}\left( \dfrac{V_{i}}{V_{f}}\right) ^{\dfrac{1}{c}}$
$=298.15\times \left( \dfrac{0.500}{2.00}\right) ^{\dfrac{1}{3.463}}=199.8$
≒$200 K$
となる。
2E・3(b)
断熱可逆膨張では、以下の式が成り立ちます。
$P_{i}V_{i}^{\gamma}=P_{f}V_{f}^{\gamma}$
また、このときになされた仕事は以下のようになります。
$C_{v}\Delta{T}$
ただし、与えられているのは定圧モル熱容量であることに注意しましょう。
これらの式と理想気体の状態方程式を用いて解くことが出来ます!
まず、理想気体の状態方程式より、最初の体積を求めると、
$V_{i}=\dfrac{nRT}{p_{i}}$
$=\dfrac{2.5×8.314×325}{240}$
$=28.15\,dm^{3}$
となる。ここで、断熱可逆膨張より、
$P_{i}V_{i}^{\gamma}=P_{f}V_{f}^{\gamma}$
が成り立ち、
$\gamma=\dfrac{C_{p.m}}{C_{v,m}}=\dfrac{C_{p,m}}{C_{p.m}-R}$
$=1.666$
である。よって、最終の体積は、
$V_{f}=V_{i}\left(\dfrac{P_{i}}{P_{f}}\right)^{\dfrac{1}{\gamma}}$
$=28.15\times\left({\dfrac{240}{150}}\right)^{\dfrac{1}{1.666}}$
$=37.32\,dm^{3}$≒$=37.3\,dm^{3}$
となる。これを用いて、理想気体の状態方程式より、最終の温度は、
$T_{f}=\dfrac{150\times37.32}{2.5\times8.314}$
$=269.3\,K$≒$269\,K$
である。最後に、なされた仕事は断熱可逆膨張過程において、$C_{v}\Delta{T}$と書けるので、
$C_{v}\Delta{T}=\left(C_{p,m}-R\right)\times2.5\times\left(269.3-325\right)$
≒$-1.74\,kJ$
となる。
2E・4(b)
2E・4(b)と同様に断熱可逆膨張なので、
$T_{f}=T_{i}\left(\dfrac{V_{i}}{V_{f}}\right)^{\dfrac{1}{c}}$
$C_{v}\Delta{T}=n\left(C_{p,m}-R\right)\Delta{T}$
を用いて解くことが出来ます!
断熱可逆膨張より、最終の温度は、
$T_{f}=T_{i}\left(\dfrac{V_{i}}{V_{f}}\right)^{\dfrac{1}{c}}$
$c=\dfrac{C_{v,m}}{R}=\dfrac{\left(C_{p,m}-R\right)}{R}=2.503$
$T_{f}=296.15\times\left(\dfrac{0.400}{2.00}\right)^{\dfrac{1}{2.503}}$
$=155.7\,K$
である。したがって、なされた仕事は、
$C_{v}\Delta{T}=n\left(C_{p,m}-R\right)\Delta{T}$
$=\left(\dfrac{3.12}{28.013}\right)\times\left(29.125-8.314\right)\times\left(155.7-296.15\right)$
$=326\,J$
となる。
2E・5(b)
断熱可逆膨張より、
$P_{i}V_{i}^{\gamma}=P_{f}V_{f}^{\gamma}$
が成り立つので、これを用いればよいです!
断熱可逆膨張より、最終圧力は、
$P_{f}=P_{i}\times\left(\dfrac{V_{i}}{V_{f}}\right)^{\gamma}$
$=97.3\times\left(\dfrac{0.4}{5.3}\right)^{1.3}$
$=3.64\,Torr$
となる。
最後に
いかがでしたか?
今回は、アトキンス物理化学(上)第10版の2章D・E演習問題(b)の解答及び解説をしてきました。
演習問題を沢山解いてテストや院試で高得点を目指しましょう!
もし、この記事の人気があれば他の演習問題の解説・解答に関する記事も増やしていきたいと考えています!
ぜひ、参考にしてみてくださいね!


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