皆さんは、
東京科学大院試に向けて過去問を解いているけど、難しい!
過去問の解答が欲しい!
と思っていませんか?
この記事では、2024年入学東京科学大の物質理工学院応用化学系の物理化学の問題解答について、解説していきます!
問題(Ⅰ-3)はこちら(ホームページ)からダウンロードできます。
ぜひ、問題を解いてから読んでみてください!
こちらの解答は正式なものではなく、筆者が出した解答ですのでその点には十分注意してお読みください!


Ⅰ-3(1)
①
ア 平均速さ${v_{mean}}$
イ 最確速さ${v_{mp}}$
ウ 根平均二乗速さ${v_{rms}}$
解説
まず、速さの代表値は主に3つあることを覚えておきましょう。
・平均速さ…一般的な速さの平均値
・最確速さ…出現確率が最大となる(最も確からしい)速さ
(マクスウェル分布のピーク位置の速さ)
・根平均二乗速さ…運動エネルギーが平均値となる速さ
平均速さと根平均二乗速さは紛らわしいですが、
根平均二乗速さは運動エネルギーと関係があります!
高校物理でやったように、運動エネルギーは$\frac{1}{2}m{v^2}$ですよね。
つまり、${v^2}$に比例するということです。
根平均二乗速さは一見意味が分かりにくいですが、要するに、
${v^2}$の平均値に対し、次元を合わせるために平方根をつけたものです。
なので、『根平均二乗速さは運動エネルギーをよく反映した値』であるということが出来ます。
②
分子の速さは幅広い範囲に分布を持ち、より高速な分子の速さの二乗値は大きくなる。したがって、根二乗平均速さはそれらの二乗値により算術平均が大きくなるため。
解説
先の3つの速さは大小が決まっており、
${v_{mp}} \le {v_{mean}} \le {v_{rms}}$
です。
分子の個数は(有限ではあるが)無数なので、実際に平均を求める際は期待値と同様に求めます。
しかし、分子の個数をm個とすれば、
平均速さ:$\frac{{\sum\limits_{n = 1}^m {{v_n}} }}{m}$
根平均二乗速さ:$\sqrt {\frac{{\sum\limits_{n = 1}^m {{v_n}^2} }}{m}} $
と(求めることはできないものの)算術平均で表すことが出来ます。
ここで、分子の速さはマクスウェル分布に従う、すなわち速さは幅広い範囲の分布を持ちます。
そのうち、高速な分子について${{v_n}^2}$は非常に大きな値になるため、算術平均も同様に大きな値になることが予想されます。
したがって、${v_{mean}} \le {v_{rms}}$になると説明できます!
③
${v_{mean}} = \int_0^\infty {vf(v)dv} = \int_0^\infty {v\left[ {4\pi {{\left( {\frac{m}{{2\pi {k_B}T}}} \right)}^{\frac{3}{2}}}{v^2}{e^{ – \frac{{m{v^2}}}{{2{k_B}T}}}}} \right]} $
$ = 4\pi {\left( {\frac{m}{{2\pi {k_B}T}}} \right)^{\frac{3}{2}}}\int_0^\infty {{v^3}{e^{ – \frac{{m{v^2}}}{{2{k_B}T}}}}dv = } 4\pi {\left( {\frac{m}{{2\pi {k_B}T}}} \right)^{\frac{3}{2}}} \times \frac{1}{2}{\left( {\frac{{2{k_B}T}}{m}} \right)^2} = {\left( {\frac{{8{k_B}T}}{{\pi m}}} \right)^{\frac{1}{2}}}$
解説
${v^n}$の平均値は、
$\int_0^\infty {{v^n}f(v)dv} $
で求めることが出来ます。
今回は平均速さ${v_{mean}}$を計算するので、
${v_{mean}} = \int_0^\infty {vf(v)dv} $
を与えられている積分公式を利用して整理すればよいです。
Ⅰ-3 (2)
①
AB(s)が解離するとA(g)とB(g)が等モルで発生し、問題文より解離蒸気圧は$600\,kPa$であるから、それぞれの分圧は$300\,kPa$である。
したがって、
$K = \frac{{{p_A}{p_B}}}{{{p^ \circ }^{\,2}}} = \frac{{300 \times 300}}{{{{100}^2}}} = 9.0$
となる。
解説
大学化学では、平衡定数は無次元化します。
したがって、無次元になるように標準圧力で割ることを忘れないようにしましょう!
②
$ – 1.7\,kJ\,mo{l^{ – 1}}$
解説
${\Delta _r}{G^ \circ } = – RT\ln K$の式を使います。
${\Delta _r}{G^ \circ } = – RT\ln K = – 8.3 \times 730 \times \ln 32 = – 8.3 \times 730 \times 4\ln 2$
≒$ – 1.7 \times {10^4}\,J\,mo{l^{ – 1}} = – 1.7\,kJ\,mo{l^{ – 1}}$
と計算できます。
③
$2.2 \times {10^2}\,J\,mo{l^{ – 1}}\,{K^{ – 1}}$
解説
${\Delta _r}{G^ \circ } = {\Delta _r}{H^ \circ } – T{\Delta _r}{S^ \circ }$の式を使います。
②の結果も用いて、
${\Delta _r}{S^ \circ } = \frac{{{\Delta _r}{H^ \circ } – {\Delta _r}{G^ \circ }}}{T} = \frac{{1.6 \times {{10}^2} – 1.67}}{{730}}$
≒$0.22\,kJ\,mo{l^{ – 1}}\,{K^{ – 1}} = 2.2 \times {10^2}\,J\,mo{l^{ – 1}}\,{K^{ – 1}}$
と計算できます。
④
標準反応エンタルピー${\Delta _r}{H^ \circ }$が正であるから、この反応は吸熱反応である。したがって、ルシャトリエの原理から、昇温により正反応方向に平衡が移動するため。
解説
${\Delta _r}{H^ \circ } < 0$…発熱反応
${\Delta _r}{H^ \circ } > 0$…吸熱反応
です。
したがって、ルシャトリエの原理より昇温すると温度が低下する方向である正反応の方向に平衡が移動し、平衡定数は増加します。
⑤
オ $1/T$
カ $\ln K$
キ $ – {\Delta _r}{H^ \circ }/R$
ク 正
ケ 吸熱
解説
ファントホッフの式は以下の2通りで表現することが出来ます。
$\frac{{d\ln K}}{{dT}} = \frac{{{\Delta _r}{H^ \circ }}}{{R{T^2}}}$
$\frac{{d\ln K}}{{d\left( {1/T} \right)}} = – \frac{{{\Delta _r}{H^ \circ }}}{R}$
このうち、今回用いるのは後者の式です。
ファントホッフの式より、
${\left( {1/T} \right)}$を横軸にとり${\ln K}$をプロットすると、勾配が$ – \frac{{{\Delta _r}{H^ \circ }}}{R}$の直線が得られます。
直線が右下がり、すなわち勾配が負であるとき、$ – \frac{{{\Delta _r}{H^ \circ }}}{R}$は負、よって${{\Delta _r}{H^ \circ }}$は正ということが出来ます。
${\Delta _r}{H^ \circ } > 0$より、これは吸熱反応です。
最後に
いかがでしたか?
今回は、2024年度東京科学大院試の応用化学系の物理化学の問題について解説してきました。
今後も過去問の解説をどんどんしていきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね!



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